国連安保理がミャンマー情勢をめぐって初めて決議を採択しました。
その背景の1つは、決議文から「ミャンマーへの武器輸出禁止」の文言を削除したことです。
クーデターを起こしたミャンマー軍は武器を、中国36%、ロシア27%、インド17%と主と頼っていて、この5年間で多くの武器を輸入してきました。
このうち中国とロシアについては、ことし2月には国連の特別報告者が「去年のクーデターの後もミャンマー軍に対して市民の弾圧に使う武器を供与している」と非難しています。
今回の決議は、武器輸出禁止の文言が削除されたことでミャンマーに武器を供与する大国3か国がそろって、拒否権を発動せず棄権に回ったことで、採択が可能になったのです。
疑問視される決議の効果…軍が強める空爆
イギリスに拠点を置く民主化支援団体「ビルマ・キャンペーンUK」は「決議に実際的な影響はない」としています。
ミャンマーでクーデターが起きてから来年の2月で2年となり、軍や治安部隊の発砲などで死亡した人は2600人を超えました。
最近、懸念されているのは軍が空爆を強めていることです。
<ロシア製Yak130(資料)>
国際調査グループ「ミャンマー・ウィットネス」によりますと、この空爆に利用されている航空機が、ロシアから購入したロシア製のYak130で、さまざまな爆弾などを搭載できることから大きな犠牲をもたらしていると指摘しています。
これに対抗する民主派勢力の組織「国民統一政府」の大統領代行は、ロイター通信のインタビューに対して軍の攻撃を止めるため、欧米諸国に対してウクライナ同様に武器を提供するよう求めるなど、戦闘が激化する危険性をはらんでいます。
国連安保理が機能不全とも言われる中で、今回、決議が採択されたのは、重要な一歩と評価する声も少なくありませんが、情勢をこれ以上悪化させないためにも決議の内容を実行に移せるか試されています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分32秒あります)
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