アメリカのバイデン大統領は、国際テロ組織アルカイダの現在の指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者をアフガニスタンで殺害したと発表しました。
アメリカ政府は、このザワヒリ容疑者をタリバンがかくまっていたと指摘してタリバンへの批判を強めています。
ブリンケン国務長官は「アルカイダの指導者をカブールにかくまったことで、タリバンはドーハ協定に著しく違反した。タリバンは、テロリストがアフガニスタンの領土を使用して他国を脅かすことは許さないと保証していた」と声明を発表したのです。
このドーハ協定というのは、アメリカとタリバンがおととし2月に調印した和平合意です。
アメリカはアフガニスタンから軍を撤退させる一方で、タリバンはアルカイダとの関係を断つと約束するという内容でした。
タリバン側はザワヒリ容疑者をかくまっていたということについて、まだ否定も肯定もしていませんが、ザワヒリ容疑者が潜伏し殺害された場所を見ると、首都カブールの中心地なのです。
この場所は各国の大使館からも近く、レストランなども多く人目につきやすい場所です。
このような場所にどうやって潜伏できたのか、ザワヒリ容疑者の隠れ家を用意したと疑われている人物が存在します。
それは現在、タリバンの暫定政権で内相代行を務めているシラジュディン・ハッカーニ氏です。
テロリストとしてFBIから手配されている強硬派です。
アメリカ政府によりますと、アメリカがザワヒリ容疑者を殺害後、ハッカーニ氏のグループのメンバーがザワヒリ容疑者が隠れ家にいたことを隠そうとする動きを見せたということで、実際にザワヒリ容疑者の家族を別の隠れ家に移したと指摘されています。
タリバンがアフガニスタンで実権を握ってまもなく1年となります。
ただ国際社会、特に欧米はタリバンによる女性への対応などを問題視し、政権としては承認しておらず、国際社会からの支援・援助は減少していると見られています。
タリバンが今もアルカイダと密接な関係を結んでいるとなれば、欧米とタリバンの関係が悪化するのは間違いなく、アフガニスタンは国際社会からの支援や援助を失い、一段と混迷を深めることになりかねない状況です。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分41秒あります)