【解説】ロシア リトアニア 深まる対立に警戒感 (油井'sVIEW)

NHK
2022年6月29日 午後0:32 公開

バルト3国の1つ、リトアニアの政府は今月、ロシア本土とロシアの飛び地のカリーニングラードを結ぶ鉄道貨物輸送について、EUの制裁対象となる石炭や建設資材などを運んでいるとして、輸送を制限する措置を始めました。

これに対して、ロシアのハッカー集団「キルネット」は先週、「48時間以内にカリーニングラードの封鎖を解除しろ。解除しないとリトアニアの500社以上の企業がとんでもない状況に陥るだろう」と犯行予告ともとれる動画を投稿したのです。

現にリトアニアは「キルネット」によるものとみられるサイバー攻撃を受けたといいます。

リトアニア政府によると、DDoS攻撃と呼ばれる手口で大量のデータが送られサーバーが機能停止に追い込まれたということで、政府機関や民間企業が広く被害を受けたということです。

リトアニア国防省の担当者は主要なサイバー攻撃は抑え込んだとしながらも「通信やエネルギー、金融機関を標的に、攻撃が数日間続く可能性が高い」と警戒を強めています。

またカリーニングラードの封鎖には、ロシアだけでは無くベラルーシ政府も反発を強めています。

ルカシェンコ大統領はプーチン大統領と会談した際に「宣戦布告のようだ、認められない」と発言しています。

プーチン大統領とルカシェンコ大統領は、核弾頭も搭載可能なロシアの短距離弾道ミサイルをベラルーシに配備する考えを示しており、これはリトアニアをけん制する狙いもあるとみられています。

ウクライナが危惧するベラルーシ参戦のゆくえについての解説はこちらから

これに対してリトアニアは、NATO首脳会議でロシアの脅威に備えリトアニアに駐在するドイツ軍などNATO軍の増強を要請する見通しですが、ロシアとリトアニアの対立がサイバー空間以外にも飛び火しないか警戒が強まりそうです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分37秒あります)

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