「F16戦闘機」「長距離ミサイル」求めるウクライナ 欧米の対応は

NHK
2023年1月31日 午後5:39 公開

ロシアによる大規模な攻撃の可能性に警戒を強め、さらなる武器の支援を各国に求めているウクライナ。しかし新たな武器の供与をめぐっては欧米各国の間で足並みの乱れも見え始めています。油井キャスターの解説です。

(「国際報道2023」で1月30日に放送した内容です)
 

戦車の供与が実現したのを受けて、ウクライナ政府は、次の武器として「F16戦闘機」と「長距離ミサイル」を求める声を強めています。この2つが次の焦点と、先日、ウクライナへの軍事支援を各国が協議する、通称「ラムシュタイン会議」で訴えて協力を求めました。

ゼレンスキー大統領、今回は「戦車のラムシュタイン会議」と位置づけた上で、次のように述べたのです。

ゼレンスキー大統領:次回は『F16戦闘機と長距離ミサイルのラムシュタイン会議』として歴史に残るだろう。勝利の行方はあなた達が握っている

次回のラムシュタイン会議に向けて訴え強めるウクライナ

来月(2月)開かれる見通しのラムシュタイン会議に向けて、ウクライナ政府は先週からSNSや会見を通し、次のようにF16戦闘機と長距離ミサイルの供与を国際社会に訴える活動を展開しています。

  • F16は自爆ドローンと巡航ミサイルを破壊できる
  • ウクライナ兵士への(F16の)訓練は6か月で完了できる

ただ、欧米は慎重な姿勢を崩していません。
 

特に長距離ミサイルについては、去年(2022年)、サリバン大統領補佐官が

「射程300キロのミサイルはウクライナに供与しない」

「アメリカの重要な目標の1つは第3次世界大戦に至るような環境を作らないことだ」

と述べたのです。

この長距離ミサイルについては先月(12月)のバイデン大統領とゼレンスキー大統領の共同記者会見の場でも質問が出ましたが、バイデン大統領は回答を避けました。また、戦闘機の供与についてアメリカは、一時期前向きに検討する姿勢を示しましたが、先週の記者会見では回答しませんでした。

戦闘機の供与をめぐってヨーロッパの間では、オランダの外相が、柔軟に検討する姿勢を示したのに対して、ドイツのショルツ首相は「戦闘機は送らない」と明言したと伝えられるなど再び、足並みの乱れも見え始めているのです。

戦闘機と長距離ミサイルを供与するかどうか、今後、欧米の間で議論が高まる見通しですが、一方で、これ以上犠牲者を出さないための外交や働きかけが何より求められています。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分35秒あります)

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