ロシアによる軍事侵攻で甚大な被害を受けているウクライナの復興を話し会いが始まっていますが、同様に戦後を見据えて検討が始まっているのが"ウクライナの安全をいかに保障するか"ということです。
ウクライナは当初、NATOに加盟することで自国の抑止力を高め、国の安全を確保するねらいでした。
しかしNATO加盟が現実的には厳しい中で、戦後、どのように自国を守る選択肢があるのか、本格的な検討を始めているのです。
そこでゼレンスキー大統領は"ウクライナのための国際安全保障グループ"を立ち上げました。
メンバーにはNATOのラスムセン前事務総長、オーストラリアのラッド元首相、アメリカのフロノイ元国防次官などが名を連ねています。
そのラスムセン氏は「ウクライナはこの戦争に勝ち、2度とこのようなことを起こさせてはいけない。将来にわたってウクライナに独立と安全を保障するモデルを見つけるのがこのグループの目的だ」と発言しました。
ウクライナは1994年にウクライナが旧ソビエト時代の核兵器を放棄する見返りに、アメリカ、ロシア、イギリスの関係国がウクライナの安全を保障することが盛り込まれた"ブダペスト覚書"を結びました。
しかし今回その覚書は全く機能せず、ウクライナとしては裏切られた思いが強いことから、より実効性のある保障を得るねらいで専門家のグループを立ち上げたのです。
さらにこの議論はG7など欧米の間でも始まっており、ドイツのショルツ首相は「ウクライナの安全保障を同盟国と協議中だ。NATOの加盟国に与える保障とは異なるものとなる」と述べています。
ウクライナはNATOに変わる安全保障の枠組みを得ることになるのでしょうか。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分31秒あります)