アメリカ国防総省の近くで爆発が起きたとする偽画像が5月22日、ネット上で拡散。
国防総省付近で大きな黒煙が上がっているように見えますが、AIで生成されたものとみられます。元の投稿はその後削除されました。
<拡散された偽の画像>
インドでは、主要テレビ局の1つが、
「アメリカ国防総省の近くで爆発が起きたようだ」
と速報。1時間余りあとに速報を取り消したことを明らかにしました。
また、偽の画像は、金融ニュースなどを発信するアメリカのメディア、ブルームバーグを装ったアカウントからも投稿されたことで、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価が一時、100ドル以上下落する事態になるなど、騒動に発展しました。
(「国際報道2023」で5月23日に放送した内容です)
AIを利用して誰もが簡単に精巧な画像や動画をつくれるいま。今月(2023年5月)アメリカで話題になったのは、こちらの動画。
野党・共和党がAIで制作した2024年の大統領選挙に向けた宣伝動画です。
「もしバイデン大統領が再選されれば中国が台湾を侵攻する」
「銀行が経営破綻する」
そんな恐れがあるというイメージ画像がAIでつくられ、物議を醸しました。
さらに、2023年3月には、トランプ前大統領が警察官に拘束されるというAIでつくった偽画像がネット上に拡散し、こちらも大きな話題になりました。
・G7サミットでAIの規制をめぐる立場の違いが明らかに
こうした生成AIが作り出す偽情報への対応や著作権の保護などAIがもたらすリスクは、G7広島サミットで議論された主要テーマの一つでした。
その結果、G7各国は「広島AIプロセス」として、信頼できるAIの普及に向けて閣僚級でさらに議論し、年内に報告をまとめることで一致しました。
一方で、首脳宣言には
「信頼できるAIという共通のビジョンと目標を達成するためのアプローチと政策手段がG7各国の間で異なることを認識している」
とも書かれ、AIの規制をめぐる立場の違いが明らかになっています。
EU=ヨーロッパ連合は、AIを規制する法案を提出するなど法的な規制に前向きですが、日本などは企業の成長を阻む法的な規制には慎重な姿勢です。
規制をめぐる国際的な議論は今後、活発化する見通しですが、私たちの社会や経済の安定を大きく揺るがしかねいAIで作った巧妙な情報が、それも瞬時に拡散するSNSの時代の今。
私たちは、経験したことがないリスクに直面しているようです。
油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は3分26秒あります)
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