ロシア西部への攻撃 ウクライナ関与は(油井’s VIEW)

NHK
2023年5月25日 午後5:33 公開

ロシア西部を攻撃したロシア人などの義勇兵を名乗る2つの組織。

この組織が戦闘に使っていたとされる装甲車など軍事車両の動画や画像が、ロシアのメディアなどによってネット上に掲載されています。

この軍事装備品が、実は、アメリカ政府がウクライナ軍に供与した車両ではないかという疑いが浮上し、関心を集めています。

(「国際報道2023」で5月24日に放送した内容です)


・第三者による装備使用の指摘はロシア以外からも

この疑惑についてアメリカの国務省と国防総省は、それぞれ記者会見で次のように答えました。

米国務省ミラー報道官:米国が供与した兵器が使用されたという指摘をSNSなどで見た。現時点では、その信憑性に懐疑的だ。情報が完全に明確ではない。

米国防総省ライダー報道官:状況を注視している。 米国はウクライナ軍以外の第三者への装備移転を認めていない。


酒井キャスター:アメリカ政府は第三者への装備移転を認めていないことを強調していましたね。ロシア側による 情報戦の可能性も否定できませんが、万が一、アメリカが供与した装備がウクライナ軍を通して義勇兵を名乗る今回の組織に渡っていたら問題になりそうですね。

油井キャスター:そうなんです。アメリカの装備品がロシア国内での攻撃に使われたという指摘は、 ロシア側のメディアだけではない。


それがこちら、アメリカのニューヨーク・タイムズが「アメリカ製の装甲車がロシアへの侵攻に使われた模様」と報じたほか、ワシントン・ポストもアメリカ軍が供与した軍用車両が使われた可能性を報じているのです。

・“アメリカとウクライナ両国の緊密な関係に影を落としかねない”

アメリカ政府は、ウクライナ政府に対して莫大な量の兵器や装備を供与してきましたが、その目的はウクライナ領土の奪還と防衛のためで、ロシア領内での攻撃については使わないよう釘を刺してきました。

それだけに、もしウクライナ政府が今回の攻撃に深く関わっていて、アメリカから供与された兵器をアメリカには内緒で義勇兵の組織に使わせていたのであれば、両国の緊密な関係にも影を落としかねないと指摘するアメリカの報道も出ています。

アメリカ政府は、5月23日、ウクライナ政府との間で電話による国防相会談を行ったと発表しましたが、今回の問題についてはどのようなやりとりがあったのかは明らかにしておらず、その内容に関心が高まっていますが、まずは事実関係の確認が急がれているといえそうです。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。

(この動画は2分52秒あります)