朝と夜のキャスターが語る!国際ニュースで変わる世界の見方【vol.2】

NHK
2023年5月23日 午後6:46 公開

夜の『国際報道2023』、朝の『キャッチ!世界のトップニュース』。朝と夜、それぞれの番組から3名のキャスターが集合してざっくばらんに語り合う『国際ニュース番組の舞台裏』、第2回は国際ニュースで変わった“世界の見方と暮らし”をテーマにお届けします。

(vol1の記事はこちらから読めます)

髙𣘺彩(たかはしあや)

1990年2月23日生まれ、千葉県出身。NHK新潟局のキャスターなどを経て、2020年4月より『キャッチ!世界のトップニュース』キャスター。趣味・特技は料理と食べること、社交ダンス。栄養士やフードコーディネーターの資格を持つ。

中川栞(なかがわしおり)

1990年7月4日生まれ、兵庫県出身。琉球朝日放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーなどを経て、2020年4月より『キャッチ!世界のトップニュース』キャスター。趣味・特技は異国籍料理巡り、旅行、ゴルフなど。

酒井美帆(さかいみほ)

1991年03月19日生まれ、神奈川県出身。テレビ新潟アナウンサー、司法記者などを経て、2018年より『国際報道』キャスター。趣味・特技はキックボクシング、ダイビング。PADIレスキュー・ダイバー、防災士資格を持つ。

・ニュースで変わる“世界の見方”

--国際ニュース番組のキャスターになって、海外に対する見方や考え方は変化しましたか?

髙𣘺:私、最近イスラエルへ行ったんです。この仕事をしていなかったらたぶん行かなかったですね。中東はテロや衝突のニュースを読むことも多いので、観光できるイメージがなくて。

でも、国際ニュースに関わるようになって、各地の紛争などは宗教が大きな要素になっているケースがとても多いなと気づかされたんです。

宗教、主に一神教について理解しようと何冊か本を読んでみたんですけど、文字で勉強するだけでなく、現地の雰囲気を肌で感じた方がいいんじゃないかと思い、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であるエルサレムに行きました。

中川:もともとそういう国が好きなんだと思ってた!

髙𣘺:全然違いました!『キャッチ!』の担当になってからですね。

中川:紛争が起きている国に行くことに対して不安はなかった?

髙𣘺:家族や友達に心配されました。でも、イスラエルを知る人に相談したら「観光にはすごくいい国だよ、ぜひ行ってみて!」と言われて、知っている人と知らない人でこんなに言うことが違うんだと驚いて、さらに行ってみたくなりました。

--実際行ってみてどうでしたか?

髙𣘺:とてもよかったです!ご飯がおいしいし、街中は近代的で清潔でしたし。

酒井:宗教の聖地はどんな感じだった?

髙𣘺:現地の方に「観光客はここに来たら、情報過多でよく分からなくなって帰っていくんだよね」って言われました。

一同:笑

髙𣘺:実際、私もまだ整理がついていないです。異なる宗教同士でいがみ合う様子は、私が見たかぎり、全く見あたらなくて、お互いを尊重していると感じました。「嘆きの壁」の前で泣いている、たくさんの人をこの目で見たときには、正直なところ「私はこの人たちと全く同じ気持ちになることはできない。全部を理解することはできないな」と思いました。

(撮影:髙𣘺彩キャスター)

でも、涙を流すほど真剣に祈っている人たちがいる、ということを実際にこの目で見て体感したことは本当に貴重な経験でした。こういう価値観があるんだ、って理解して尊重できることが大事なのかなと思うようになりました。

酒井:世界が広がってる!!

--酒井さんはどうですか?

酒井:国際ニュースをよく見るようになりましたね。新潟でアナウンサーをしていた頃は国際面は一切読んでいなくて、地域面と社会面ばかりでした。

髙𣘺:私も!

中川:同じく! 私も以前は国内の情報をインプットするのに必死でした。

酒井:2018年に『国際報道』のキャスターになってから国際ニュースをたくさん見るようになって、日々の生活の中でも何かと視点が広がりました。たとえば、病院を受診したうえで、低用量ピルは毎月数千円、緊急避妊薬は数万円払わないと手に入らないのが当然だと思っていたけれど、ニュースを通じて、世界にはピルを無料で配布していたり、緊急避妊薬も薬局などで手軽に入手できたりする国があると知りました。「なんで日本は違うんだろう?」「なぜこうした違いがうまれているんだろう?」そういう疑問を持つようになりましたね。

髙𣘺:当然だと思っていたら何も変わらないもんね。

酒井:そうなのよ。今の生活に疑問を持つと、より良い方向に向かえるかなって。海外のニュースをチェックすると、そういう発見がたくさんあるんです。

中川:私は、ちょっと(酒井)美帆ちゃんと重なる部分があるんですけど、日本で生活していて感じる常識が世界の常識じゃない、当たり前だと思っていたことは実は当たり前じゃない、と視野が広がったことが一番大きいですね。たとえば、イランの女性がスカーフの被り方をめぐって逮捕されて亡くなったニュースを伝えたときに、今この時代に起こっていることとはとても思えなくて。

酒井:女の子は学校に行けない、とかね。

中川:そうそう。同じ女性で何の罪もないのに、なんで?と。私たちが当たり前に受けている教育も、彼女たちは受けられない。女性の権利が抑圧されてどんどんエスカレートしていると感じます。『女性が堂々と生きられる社会を』とか、『学ぶ環境がある社会を』などといった、本来認められているはずの権利について、改めて考えなくてもすむような社会に全世界がなってほしいと思います。

髙𣘺:アフガニスタンのように、女性の教育を厳しく制限している国もある。何事も決して当たり前じゃなく、今この瞬間たまたまこうなっているだけで、いつどうなってもおかしくないんだなと。ロシアのウクライナ侵攻や、中国と台湾の関係を見ていると、まったく無関係ではないと感じるようになりました。

中川:日本も巻き込まれる可能性もあるし、リスクを事前に知るために国際ニュースをキャッチするのはとても大事だよね。

身近に広がる国際ニュースへの関心

--皆さんを通して、ご家族や友人の国際ニュースへの関心が広がったりしていますか?

酒井:友達からメッセージがきますよ。おととし避妊の特集を放送した時に、アメリカに住んでいる友人が連絡をくれました。現地で流行っている最新の避妊薬の事情などを教えてくれて、「こういう話題に関心があるから、また特集見るね」と言ってくれました。

オーストラリア在住の友達も、山火事のニュースなどをすごく丁寧にチェックしてくれているようですし、他の同世代の友達も見てくれています。「世界でこんなことが起きてるんだね」ってたまにメッセージをくれますよ。

髙𣘺:うちは母が国際派になってきました(笑)。

中川:お母さんが国際派に!?これまで国際ニュースに関心がなかった人も、世界に興味を持つきっかけになってくれたらうれしいよね。

髙𣘺:母も以前は国際ニュースを見る習慣がなかったんですけど、私が担当するようになってからはキャッチを見るようになって「今あの国はこうなっているらしいわね…」なんて話をしてきてびっくりしました。映像に力があるから印象に残るのかな。

中川:私は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに見るようになった友人が多いです。『キャッチ!』は、「それぞれの国や地域で今リアルに起きている事を中心に世界全体を知ることができるし、いろいろな国のテレビの雰囲気や視点の違いも感じられて面白い」「海外の物価の上がり方とか利上げの動きなどは日本に直結することも多いから、いち早く情報を知ることができるのはありがたい」と言っています 。(国際ニュースを見ることは)改めて今の世の中を生きる上で必要なことだと感じます。

髙𣘺:私の友人にも、ウクライナで稼働中の原子力発電所が攻撃を受けた一件から、国際ニュースをしっかりと見始めた人がいました。

・訪れたい国は…

--行ってみたい国はありますか?

酒井:私は近々、『国際報道』の特集の取材でフィンランドに行くんです。

(酒井キャスター取材の「フィンランド“幸福のメソッド”」はことし5月シリーズでお伝えしました)

髙𣘺:そうなの!?

酒井:はい!特集は3本立ての予定で、1本目が「女性の社会進出」。政治家や企業のトップになぜ女性が多いのかというテーマです。2本目が「再出発できる社会」。学費が大学までかからないので、社会人になってからもう一回大学に入り直して、転職や再出発するというのが珍しくないそうなんです。そして3本目は「サウナ」です!

※データが小さいので差し替えたい※

(フィンランド初の女性大統領 ハロネン氏にもインタビュー)

酒井:あと、今回は残念ながら実現しなかったんですが、サンナ・マリンさんにぜひお会いしたかったですね。最年少の34歳で首相になられた女性です。フィンランドの総選挙で与党が敗れたことを受け、辞表を提出されましたが。政治家として興味があるのはもちろんですが、パーソナリティーにすごく興味があって。お話、伺ってみたかったなあ!

髙𣘺:マリンさん、素敵だよね。

中川:若くて実行力があって!

髙𣘺:私は、伝統的に女性の社会進出が進んでいない国に行ってみたいです。今一番行きたいのは本当はアフリカです。夏休みに南アフリカにいく計画をしています。前キャスターの小林雄記者がいますし、ヨハネスブルク支局に駐在していた別府キャスターもよくアフリカの解説をしています。これから人口が増えて世界の4人に1人がアフリカの人になるといわれているので、その今をぜひ見たいと思っています。

中川:私も人口が著しく増え、これから世界を引っ張っていくアフリカの成長を肌で感じてみたいですね。あと動物が大好きなので、サファリも満喫したいです。日本にいると目にする機会の少ない文化や歴史に触れたいですね。

(Vol3に続く)
 

(vol3の記事はこちらから読めます)