ロシア国内でくすぶる政府への不満 抑え込みの動きも (油井’s VIEW)

NHK
2023年3月15日 午後4:24 公開

ウクライナ情勢をめぐって、ロシア国内では政府に対する不満がくすぶっているようです。

ロシアの複数の独立系メディアが取り上げた映像では、モスクワ州から動員された兵士の妻や母親などが、「訓練も十分にしないまま兵士を前線に放り込んでいる」と、批判の声を上げたとしています。

「私の夫や他の動員兵たちは、敵との前線に派遣され、敵の大砲の餌食になっている」 「十分に武装した100人の敵を相手に、5人で敵の地域に突撃している状況だ 」

SNS上には最近、家族に加え、前線のロシア兵たちがみずから惨状を訴える動画も拡散していると言います。

「ここには大砲や砲弾が供与されていない」

ロシアの独立系メディアは、現地の状況が厳しい上に、ロシア本国から新たに派遣された動員兵が戦闘の中心となって、こうした不満が噴出しているのではないかと分析しています。

一方、ロシア国内からは、こうした戦争に対する不満や反対意見を抑え込むニュースも入ってきています。

先週は、戦争に反対するロシアの元学生に対する判決公判が行われました。

「この戦争はウクライナの人たちにとって大きな悲劇だが、隣国と平和に暮らしたいロシア人にとっても悲劇だ。ロシアに自由を、ウクライナに平和を」

大学生だったイワノフさんは、ネット上に戦争反対を訴えるチャンネルを開設したところ、ロシア軍に関する偽の情報を拡散した罪に問われ、禁錮8年半の判決を言い渡されました。

ロシアでは2月にも、女性ジャーナリストが軍に関する偽の情報を拡散した罪に問われ、禁錮6年の判決が言い渡されています。

抑圧が強まるロシア国内ですが、今回判決を受けたイワノフさんは、「大勢のロシア人が戦争に反対している。今はロシアの歴史にとって暗黒の時だが、必ず夜明けを迎える」とも語っています。

「プーチンのロシアは本当のロシアではない」。

「夜明けを待ち望んでいるロシア人が多い」。

ロシア国内の不満の声は、そう訴えています。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この映像は2分37秒あります)