アメリカのCIA=中央情報局のトップ、バーンズ長官は20日、ロシア軍・ウクライナ軍双方におびただしい数の犠牲者が出ていると明らかにしました。
ロシア軍もウクライナ軍も自分たちの死傷者数は士気に関わることもあって、公式には明らかにしていませんが、アメリカは「情報機関の最新の分析では、ロシア軍の死者数は約1万5000人で負傷者数はその3倍だ。多大な犠牲だ。ウクライナ側も同様で、ロシア軍より若干少ない程度だが、多くの死傷者数だ」との見方を示しています。
その上でアメリカはプーチン大統領は戦闘が長引けば長引くほど、自分に有利になると考えていると指摘しているのです。
つまりプーチン大統領の見立てでは、冬に向けてロシアのエネルギーがなく困るのはヨーロッパの一般の人たちで、欧米の政治指導者たちも世論の支持を失いかねないことから、対ロシア制裁の欧米の結束も次第に破綻すると考えているというのです。
これに対してバーンズ長官は、欧米の制裁が一定の効果をあげているとみており、プーチン大統領がイランを訪問したのも、制裁の逃げ道を探すためと指摘し、欧米の制裁によって「ロシアの防衛産業が打撃を受けて自国で製造困難な無人機をイランから調達する狙い」という見方を示したのです。
プーチン大統領の「イランや中国などの協力があれば、戦争に勝利できる」という見立てを実現させないためには、欧米と日本などが対ロシア制裁で結束を維持しながら、制裁に参加していない国々からもどこまで協力を引き出せるかが戦争の行方を左右する鍵と言えそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分53秒あります)