ウクライナ側は平和サミットを呼びかけ、和平をめぐる議論を主導する姿勢をアピールしていますが、背景には停戦交渉に否定的というイメージを払拭したい狙いがありそうです。
というのもロシア側が印象づけを図っており、現にプーチン大統領は「我々は交渉の用意があるがそれはウクライナ次第だ。対話を拒否しているのは私たちではなく彼らだ」などと発言をしているのです。
ロシアとしては「交渉を拒み戦闘が長期化する要因を作っているのはウクライナ側だ」という主張を展開することで、国際世論に訴えたい狙いがあると見られます。
一見、ロシアもウクライナも交渉に前向きのように見えますが、双方の主張は大きく異なっています。
ウクライナは和平交渉の条件としてウクライナの領土からのロシア軍の撤退などをあげている一方、ロシアは併合したと主張するウクライナの4つの州のロシアによる支配を認めることを条件としているのです。
あまりにも立場が異なるため、双方とも帰すうを決するのは残念ながら軍事力と見ているようで、ウクライナ第2の都市ハルキウではロシア軍が使用した大量の使用済みの砲弾やミサイルとされるものが並べられている映像が公開されています。
「砲弾やミサイルの墓場」と呼ばれていて、このおびただしい数からも前線では激しい砲撃戦が行われていることがうかがえます。
現にゼレンスキー大統領は12月のG7首脳との会合で「残念だがロシアが今も大砲とミサイルで優位に立っている。この優勢がロシア政府の傲慢さを助長している」と訴えたのです。
ゼレンスキー大統領は先日の訪米で、アメリカから大量の砲弾を受け取る約束を取り付けました。
これに対してロシアは砲弾やミサイルを補充するためイランや北朝鮮に接近していると見られていて、双方とも本格的な地上戦を視野に準備を進めているようです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分14秒あります)