【解説】ゼレンスキー大統領訪米 アメリカの軍事支援は(油井'sVIEW)

NHK
2022年12月22日 午後5:50 公開

バイデン政権は、ゼレンスキー大統領の訪米でアメリカの超党派による揺るぎない関与を示すとして、意義を強調しています。

ただアメリカでは気になる世論調査が12月に発表されました。

ウクライナに武器を送るアメリカの軍事支援について賛成するかどうか聞いた11月の調査で、与党・民主党の支持者は76%が賛成と答えたのに対して、野党・共和党の支持者は55%にとどまったのです。

この数字は、侵攻直後の3月の時点で80%あったもので、その後7月には68%に減り、戦闘の長期化に伴い共和党支持者を中心に支援疲れが表れていると指摘されています。

共和党の下院議員が21日に投稿したツイートでは、ゼレンスキー大統領の訪米について「ウクライナのためにアメリカの納税者の数十億ドルが必要な理由を説明しに来る。馬鹿げたことだ」と批判しているのです。

アメリカ議会では共和党は主流派を中心に大半の議員はウクライナ支援に前向きですが、先ほどの議員など一部の議員はアメリカ国内に予算を使うべきだとして巨額の支援に反対しています。

バイデン政権としては11月の中間選挙の結果を受けて、議会下院の主導権が年明けに共和党に移るのを前に、アメリカが結束してウクライナを支える方針を共和党の主流派と確認する狙いもあるとみられます。

バイデン政権はパトリオットを供与する方針発表も…さらなる軍事支援は?

ウクライナ政府は引き分けになる兵器ではなく勝てる兵器を供与して欲しいと訴えているのに対して、バイデン政権は、ロシア国内を攻撃できるような強力な兵器の供与には今も慎重な立場をとっています。

今後の焦点はウクライナ側との溝が埋まるのか、ロシアとの外交や和平交渉がどうなるかです。

バイデン政権はウクライナ側に配慮して、和平交渉については表向きほとんど言及していません。

ただ戦闘が長引けば、先ほどの世論調査にもあったようにアメリカ国内でも支援疲れが広がりかねない状況です。

両首脳が互いに膝を付き合わせて戦争の出口戦略を描くのか。

その内容は表には出てこないと思いますが、ウクライナの行方を左右する重要な局面となりそうです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分50秒あります)

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