ウクライナにとって、10倍と言われるロシアとの火力の差をどう埋めていくのかが課題となっています。
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ウクライナ大統領府顧問はツイートで、ロシアと同等のりゅう弾砲1000門、多段層ロケット砲300門、戦車500台などの重火器が必要だとして、欧米側に供与を求めました。
こうした欧米が供与する武器をめぐり、ロシア側は「ブラックマーケットへ流出している」と主張しています。
ロシアのネベンジャ国連大使は「欧米がウクライナ側に供与した兵器がブラックマーケットで売られている」として、「アメリカ製のミサイル スティンガーは7000ドル、ジャベリンは3万ドルで、国際的なテロリストが放っておかないだろう」と国連の場で発言したのです。
さらにロシア大使館はツイートで、ダークネットに売りに出されているとするアメリカ製のミサイル、ジャベリンの画像を掲載し、ウクライナ側が欧米の兵器を密売している証拠だとして批判しています。
しかしこれは、欧米に武器供与をやめさせたいロシアの自作自演の可能性も指摘されています。
ロシア側はネット上に大量の偽情報を書き込むトロール・ファクトリーと呼ばれる組織を作っていて、3月に潜入したロシアメディアの記者によれば、書き込む偽情報の1つが「欧米の兵器はヨーロッパの犯罪組織やテロ組織の手に渡っている」という主張だったという証言があるとしています。
ただ欧米も、ウクライナ側から流出している可能性を排除はしていません。
欧米側は莫大な軍事支援をウクライナに行っているものの、支援が適切に使われているか十分に確認するすべがないということで、検証する枠組みが必要ではないかという声も出始めています。
今後ウクライナ側にとっては、欧米からの兵器の供与がなくなれば国家存続の危機にもなりかねないだけに、ブラックマーケットへの流出という懸念をどう払拭し、欧米の信頼を維持するかが課題となりそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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