ニュース速報

【ドイツ連邦議会選挙】ポスト・メルケル  “緑の党”支持率急伸

NHK
2021年8月3日 午後2:02 公開

16年続いたメルケル政権が終わりを迎えるドイツ。ポスト・メルケルを決める連邦議会選挙を9月に控え、注目を集めるのが環境保護を第一に掲げる緑の党です。

緑の党 ベアボック党首 「この国のすべてを変えるときだ。私たちは40年間準備をしてきた」

緑の党から初めて首相が誕生する可能性も取りざたされています。その躍進の背景について読み解きます。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で7月5日に放送した内容です)

支持率急伸 緑の党

9月に連邦議会選挙が行われるドイツ。下の図は現在の連邦議会の議席数です。

メルケル首相が率いてきた与党会派、キリスト教民主・社会同盟と、今回注目されている緑の党です。政党の支持率をみてみると前回2017年の選挙の頃、緑の党は8%にとどまっていましたが、現在は20%を超え、それ以降、支持率ではメルケル首相の会派に次ぐ勢いとなっています。5月には支持率が逆転し、トップに立ったこともありました。

緑の党は1980年の結党以来一貫して環境保護を訴え続け、地球温暖化や気候変動に歯止めをかけることを最大の目標としています。躍進の背景には何があるのか。ドイツに30年以上在住し、取材を続けるジャーナリスト、熊谷徹(くまがい・とおる)さんに聞きました。

ドイツ 緑の党 若者支持で躍進

熊谷徹さん:緑の党はドイツの若い有権者の間で高い人気があります。なぜかというと、現在ドイツで気候変動・地球温暖化の影響が現れているからです。例えばアルプスの氷河がどんどん小さくなっていたり、冬に雪不足でスキーができないようなことがあるんです。

2019年にはスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの「Friday For Future(未来のための金曜日)」という運動があり多くの若者が参加しました。こうした地球温暖化に歯止めをかけようという運動はドイツで非常に人気があり、若者から強い支持を受けています。

同じ2019年に行われたヨーロッパ議会選挙では、若い有権者がこぞって投票に出かけて投票率が大幅に上がりました。各国で選挙が行われるわけですが、ドイツでは緑の党は得票率をそれまでの2倍に増やしました。地球温暖化問題に熱心な政党は得票率が上がり、熱心でない政党は得票率が下がってしまうという現象が起きたのです。

ドイツ 緑の党 大胆な環境政策

緑の党の首相候補、ベアボック氏。

イギリスに留学し、欧州議会の議員事務所で働いたこともある国際派です。政権運営に携わった経験はないものの、巧みな弁舌と党内をまとめあげる統率力で頭角をあらわしました。6月発表した選挙公約には、温暖化を食い止めるための大胆な政策が盛り込まれています。

熊谷徹さん:現在のメルケル政権は、石炭・褐炭火力発電所を2038年までに完全に廃止するという目標を持っています。緑の党のマニフェストでは石炭・褐炭火力発電所の廃止について、メルケル政権の目標よりも8年早めて2030年までに全部廃止するとしています。交通、運輸についても、緑の党は非常に野心的なマニフェストを掲げています。自動車では2030年までにガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの新車の販売を完全に禁止する。飛行機では、ミュンヘンからベルリンまでのような国内の短距離便の廃止といった政策を打ち出しています。

ドイツの有権者 なぜ環境に関心

「環境」が選挙の大きなテーマになっているドイツ。背景には、気候変動が安全保障上の問題につながるという危機感があると熊谷さんは指摘します。

熊谷徹さん:ドイツでは、ヨーロッパという地理的な要因もありますが、例えば6月にマダガスカル南部の干ばつで45万人が飢きんにさらされたことなど、中東やアフリカについてのニュースがたびたび報道されます。気候変動が更に深刻化した場合、多くの難民がヨーロッパに避難してくることになります。ドイツ人の多くは2015年にヨーロッパへ逃れた難民がドイツ国内に大挙して押し寄せたことで社会が混乱に陥った記憶があるので、気候変動はドイツやヨーロッパにとって安全保障上の問題なのです。ある世論調査では、新型コロナウイルスのパンデミックと気候変動のどちらが重要だと思いますか、という設問に対して半分以上のドイツ人が気候変動のほうが重要であると答えています。

緑の党 環境政策 政界への影響

選挙まで2か月あまり。緑の党に大きな課題が持ち上がっています。

きっかけは公約にかかげた炭素税の引き上げです。これが実現した場合、ガソリンの値段が1リットル当たりおよそ20円値上がりすることになり、市民の間に警戒感が広がって支持率が大幅に下がったのです。これについて与党会派の首相候補のラシェット氏は「緑の党は生活に負担を強いる党だ」と攻勢を強めています。

熊谷徹さん:緑の党がネガティブなイメージを2~3か月の間にどのように変えていくことができるかが選挙のポイントだと言えます。またキリスト教民主・社会同盟が今のまま逃げ切ったとしても支持率は30%に達していないので、キリスト教民主・社会同盟と緑の党が互いに政策を調整し、連立政権を組む可能性もあります。仮に緑の党が政権に入れなくても、キリスト教民主・社会同盟を含めたほかの政党はカーボンニュートラルを意識した政策を考えざるを得ません。そうしないと緑の党に有権者を奪われてしまうからです。緑の党の環境政策がほかの政党の政策に大きな影響を与えるということは言えると思います。

ドイツ 経済界も環境保護重視へ

中川栞(「キャッチ!世界のトップニュース」キャスター):ドイツの人たちの環境保護に対する意識の高さ、驚きました。

西海奈穂子(「キャッチ!世界のトップニュース」キャスター):「パンデミックよりも環境問題のほうが重要だ」という人が多いんですね。熊谷さんによると、ドイツでは企業も脱炭素を意識した事業を行わないと投資が集まらないなど、政界だけでなく経済界でも環境保護が重要なファクターになっているということです。