習主席は共産党のトップとして異例の3期目に入って今回、初めての外国訪問で日本をはじめ各国との首脳外交を積極的に展開しています。
中国共産党系のメディア・環球時報は社説で「国際社会は中国の存在を今日以上に期待・重視したことはない。中国はかつてなく世界の中心になっている。より多くの国が世界の統治と自国の発展には中国との良好な意思疎通が欠かせないと認識している」と賞賛しています。
自信あふれる社説ですが、実は習主席は大きな課題を抱えています。
先進国の国々で行われた世論調査では、中国の印象を「好ましくない」と回答した割合が、日本、韓国、オーストラリアなどでいずれも高くなっているのです。
またヨーロッパの国々の大半で、中国の印象が悪化しています。
特にこの数年、つまり習近平政権で悪化していて、中国の新型コロナウイルス対応や「戦狼外交」と呼ばれる強硬な外交姿勢などが影響しているものと見られています。
習主席は欧米の間で中国のイメージを改善できるのか
それは厳しいかもしれないと感じさせた一幕がありました。
習主席がカナダのトルドー首相に直接抗議し、苦言を呈したのが、テレビカメラにとらえられていました。
そのやりとりですが…
習主席:不適切だ。誠意があるならば、互いを尊重しながら話ができる。そうでなければ、どんな結果に終わるかわからない。
トルドー首相:カナダでは自由で開かれ、誠実な対話がある。我々は引き続き建設的な関係を続けていきたいが意見が一致しないところもあるだろう。
習主席:条件を整えるべきだ
習主席は、先に行われたトルドー首相と習主席の会談の中で「トルドー首相がカナダの選挙に中国が干渉しているなどと懸念を示した」とカナダのメディアが報道したことに対して会談内容が漏れたのは不適切だと抗議したものとみられています。
中国では政府がメディアをコントロールするのが通常で、習主席は報道の自由にいらだちを示したのかもしれませんが、同時に、価値観が異なる国との関係改善の難しさも認識したといえそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。