ウクライナからの食料の輸送が合意通りに再開されるのか注目されています。
食料危機で最も影響を受けるアフリカを舞台に、ロシアと欧米の攻防が目立っています。
ロシアは「食料危機の責任は欧米に」主張でアフリカ4か国訪問
今週、ロシアのラブロフ外相は、エジプト、コンゴ共和国、ウガンダ、エチオピアの4カ国を訪問。
ラブロフ外相の狙いは、食料危機の責任は欧米にあるというロシアの主張を広めることで、記者会見でも「我々はエネルギーと食料危機に関する現在の問題を協議した。アフリカの友人たちはこの問題はウクライナにおけるロシアの特別軍事作戦と関係ないということを理解してくれた」とロシアによる軍事侵攻が食料危機を招いたのではないと強調しました。
さらにラブロフ外相は今回、アフリカの新聞に「ロシアとアフリカ 将来に向けたパートナーシップ」と題した文章を寄稿し、「ウクライナに関する欧米の制裁に参加しなかったアフリカ諸国の立場に感謝する」と記し、アフリカ外交を活発化させています。
「ウクライナ侵攻が物価高を悪化させている」米仏はそれぞれ複数国訪問
欧米はというと今週、アメリカのハマー特使がエジプトやエチオピアを、フランスのマクロン大統領が、カメルーン、ベナン、ギニアビサウなどの西アフリカの国々を訪問しています。
マクロン大統領は「物価高やインフレによる供給網の混乱は、ロシアによるウクライナでの戦争が悪化させている」と述べ、世界的な価格高騰の責任はロシアにあると主張しました。
ロシアの存在感は兵器ビジネス しかし…米は「ロシアが重大な課題に直面」発言
アフリカでロシアは軍事的に影響力を強めてきました。
この5年間でアフリカが兵器を輸入した国の中では、最大の兵器供与国はロシアで、兵器ビジネスがロシアの存在感を高める一因となっていました。
ただアメリカのヒックス国防副長官は「ウクライナの戦争を続けるロシアの決定で、ロシアは兵器輸出で重大な課題に直面している」と発言。
経済制裁などの影響でアフリカへの兵器輸出にも影響が出る可能性を指摘しているのです。
バイデン政権は、先日、アフリカ各国の首脳たちとの会談=アフリカサミットを12月に開催すると発表しました。
アメリカやフランスなどは、ロシアに先行されたアフリカでの勢力図の塗り替えを目指し、巻き返しを図っています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は3分14秒あります)