【解説】米主要メディア"バイデン政権4000億円の軍事支援"(油井'sVIEW)

NHK
2022年8月25日 午後6:12 公開

「ロシアは戦闘の長期化を準備している」

アメリカの情報機関のトップ、ヘインズ国家情報長官の発言です。

発言から3か月以上経過し、ウクライナ情勢は残念ながらヘインズ長官の見立て通りに進んでいるかの印象です。

この時、ヘインズ長官は「戦争は消耗戦に発展する」とも指摘した上で「ロシアは耐久力が欧米よりも高いとプーチン大統領は判断している。食糧不足やインフレそれにエネルギー価格が悪化すれば欧米諸国の決意が弱体化すると期待しているようだ」と発言し、プーチン大統領は戦闘が長期化すれば自分に有利だと判断しているという見方も示しました。

解説:「長期化すればロシアの方が有利になる」エネルギー問題について

そのためアメリカ国内では、戦争を早く終わらせるため今よりも強力な兵器を送るべきだという意見も出ています。

先週、アメリカ政府の元高官や元外交官など約20人が共同で論考をアメリカのメディアに寄稿しました。

この中で元高官たちは「アメリカがロシアを刺激したくないと過度に警戒している結果、ロシアへの圧力が弱まっている」と指摘しています。

さらに「バイデン政権はウクライナが領土を奪還するための十分な軍事支援ではなく、こう着状態にする軍事支援によって勝利を逃している可能性がある」と批判し、強力な兵器を直ちに送るよう訴えたのです。

こうした批判をかわすためかアメリカの主要メディアは、バイデン政権は近くウクライナに対し約30億ドル、日本円にして約4000億円の軍事支援を発表すると伝えています。

アメリカのウクライナに対する軍事支援は、この半年で100億ドル、日本円にして1兆3000億円に上っており、もし30億ドルが追加されれば、かなり巨額な追加支援となりますが、戦況にどこまで大きな変化をもたらすかは不透明です。

解説:「まだ足りない」ウクライナが米に求める兵器

解説:強力兵器をウクライナへ供与するアメリカの基準とは

またアメリカ国内では11月の中間選挙を控え、国民の関心がウクライナよりもインフレなどの国内問題に移っているという指摘も出始めています。

「長期戦になれば、ウクライナを支えてきたアメリカなど西側諸国の支援疲れが顕在化する」と判断しているプーチン大統領の思惑通りになるのか、ウクライナを支える国々の覚悟が問われることになります。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分57秒あります)

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