コロナ禍でも躍進 エチオピア航空はこうして経営を立て直した

NHK
2021年4月30日 午後8:34 公開

新型コロナの影響で特に航空業界は大きな打撃を受けています。IATA(国際航空運送協会)によりますと、航空業界全体の2020年の最終的な損益はおよそ9兆円の赤字になる見通しです。(2021年4月現在)
ところがアフリカのエチオピア航空は、このコロナ禍でも黒字を維持できています。
なぜなのか。そこには厳しい状況の中で活路を見出そうとする大胆な発想と素早い決断がありました。

(ディレクター藤田修平)

新型コロナ禍の感染拡大 エチオピア航空も苦しんだ旅客事業

エチオピア航空は首都にあるアディスアベバ空港を拠点にアフリカ62都市を含め、世界でおよそ120都市に就航しており、ビジネスから観光客まで幅広く利用されるアフリカ最大の航空会社です。

2019年はおよそ1200万人がエチオピア航空を利用しました。ところが新型コロナの影響を受けた去年、旅客数は85%以上減りました。会社設立以来の危機を迎えたといいます。

貨物事業に大胆なシフト

他社と同様に旅客事業で苦戦を強いられたエチオピア航空は、業界の中でいち早く貨物の輸送に重きを置く決断をました。なぜ素早い判断ができたのでしょうか。

当時アフリカではマスクや防護服が大幅に不足していました。それまでアフリカへの医薬品や医療機器の運搬は欧米の航空会社が担っていましたが、各社は軒並み欠航。国連や先進国にとって、支援物資をどうアフリカに輸送するか、その手段の確保が課題となっていました。

そこで輸送の担い手として名乗りを上げたのがエチオピア航空です。WHOがパンデミック宣言をした2020年3月のころでした。

エチオピア航空は輸送量を確保するため、保有する旅客機110機のうち22機の座席を取り外し、貨物用に転用しました。12機だった貨物機はこれで34機に。新たに貨物機を購入するより圧倒的に早く、しかも安く輸送量を倍以上に増やすことに成功しました。旅客の需要が回復したらすぐに座席を戻すことができる、両構えの戦略です。

路線の組まれ方も有利に働きました。エチオピア航空は貨物便のほとんどが、拠点のアディスアベバ空港を経由します。国連や先進国から運んだマスクや防護服、手袋などもここに集約されます。

分配先のアフリカ各国の多様なニーズに合わせて1か所で仕分けをし、発送することで効率よく届けることができるのです。

大量の荷物をさばくため空港内に国連などの支援物資専用のスペースまで設けました。

中国の“マスク外交”も躍進の一因に

貨物への素早い転換ができた背景にはもう一つ大きな要因がありました。マスクなどを各国に配る、いわゆる“マスク外交”を展開していた中国です。

中国は物流ルートの構築のためエチオピアで鉄道などのインフラに投資してきました。この関係性を利用して各国が中国便を減らす中、大幅な増便を中国側に持ち掛けたのです。

これまで中国本土4都市に週45便ほどだった便数を7都市週100便余りと倍以上に増便しました。去年3月から6月まで中国からアフリカに輸送した支援物資は、約5万トンにのぼりました。

エチオピア航空貨物部門責任者・フィツム・アバディ氏 「多くの航空会社は中国から撤退したが、私たちは続けた。中国政府も柔軟で許可をくれた。非常にファンタスティックなことだ。全てのリソースを貨物に注いだ。PPE(個人防護具)を運ぶ要望にもこたえられ、業績も改善した」

こうして各国の航空会社が業績を落とす中、エチオピア航空は2020年上半期におよそ50億円の利益をあげることに成功したのです。

支援物資からワクチンへ

今、エチオピア航空はワクチンの輸送にも力を入れています。ワクチンを低温で保つため、数億円かけて設備を整えたとしています。冷凍庫も超低温で対応できるように改修しました。

さらに飛行機まで低温を保ったまま運搬する電気コンテナも買い足しました。エチオピア航空がこれだけコストをかけているのには、将来にわたって医薬品の運搬を本格的に担える航空会社としての地位を確立しようとしているのです。

そしてワクチンの公平な分担をめざすCOVAXファシリティのアフリカ諸国への輸送も担うことになりました。

エチオピア航空貨物部門責任者・フィツム・アバディ氏 「私たちはアフリカ中にワクチンを届ける義務がある。この難しい時のいまの経験がポストコロナでは成功に導いてくれ、強い航空会社にしてくれる」

日本総合研究所の石川智久マクロ経済研究センター所長は、エチオピア航空の経営判断について、次のように評価しています。

日本総合研究所 石川智久マクロ経済研究センター所長 「いまアフリカのビジネス界の環境は、すぐに挑戦的でやってみようというベンチャー企業にあるような挑戦心があり、挑戦に対して抵抗感がありません。この環境を体現したのがエチオピア航空だと考えています。さらにコロナ禍のアフリカを早く分析し、行動に移したことへのスピード感も評価できます。このスピード感を持って環境に変化する経営判断は、この新型コロナ禍で求められている能力だと考えています」