ウクライナに兵器を供与している欧米の防衛産業ですが、兵器増産の需要が高まっているものの、増産は思うように進まないかもしれないとスウェーデンのストックホルム国際平和研究所が5日発表しました。
具体的には「欧米の兵器生産に必要な原材料の主要な供給国がロシアであるため、兵器の増産を妨げるおそれがある。サプライチェーンの混乱が続けばウクライナ戦争で生じた新たな需要を満たすのに、一部は数年かかる可能性がある」というのです。
国際平和研究所によりますと、特に「チタン」と「アルミニウム」が欧米の航空部門にとって軍民問わず欠かせない原材料で、ロシア以外からどう調達するかが課題だとしています。
さらに欧米の防衛産業は、これまで大規模な戦争を想定せずに兵器の生産ラインを縮小させてきたことから、ウクライナ側が求めるスピードで兵器を増産するのは難しい状況です。
兵器不足は欧米よりもロシアがより深刻だと言われているが…
ロシアは欧米の制裁を受けて半導体などの調達が困難で戦車やミサイルなどの兵器の増産が難しくなっていると言われています。
ウクライナ軍は記者会見でロシア軍が撃ち込んできたミサイルについて、古い核ミサイルから核弾頭を取り除いたダミーのミサイルだったと発表しました。
これはロシア側がミサイル不足のため古い核ミサイルまで利用せざるを得ない状況という見方があるほか、ウクライナの防衛システムをかく乱させ、ウクライナ側に無駄に迎撃ミサイルを撃たせる狙いという見方も出ています。
一方、ウクライナ軍の情報当局は「ロシア軍はベラルーシから砲弾の供与を受けたほか、欧米の制裁を逃れて今もロシア国内で一定の巡航ミサイルやその他の兵器を生産できる状況だ」と発表したのです。
ロシアの防衛産業は打撃を受けているものの今も戦いを続ける能力があると警告しています。
双方の激しい消耗戦が今後も続く見通しで、残念ながらどちらが先に兵器がなくなるのか、そんな戦いの様相を呈しています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分41秒あります)