ロシアを経済的に追い込むため、EUは石炭や石油の輸入禁止を決めるなど、ロシア産のエネルギー依存からの脱却を目指していますが、EUの加盟国の1つハンガリーの外相が21日、モスクワを訪問しました。
ハンガリーのシーヤールトー外相は「今の国際情勢でわれわれにとって最も重要なのはハンガリーのエネルギー安全保障だ」として、ロシアのガスを追加購入したいというのです。
そもそもハンガリーのオルバン首相はプーチン大統領と近いことで知られています。
これまでもプーチン大統領を批判せず、EUによる厳しい対ロシア制裁についてもたびたび反対の姿勢を示してきました。
今月もオルバン首相は「当初われわれは制裁で自分の足を撃っただけと思ったが、実はみずからの肺を撃ち抜いていて、ヨーロッパ経済は息も絶え絶えだ。EUは制裁が間違いで逆効果だと認めるべきだ」などと発言し、物議を醸したのです。
ロシアのラブロフ外相も「ロシアとハンガリーのさらなる協力はアメリカとEUの反ロシア政策によって妨げられている」として、EUとアメリカ政府を批判しました。
ハンガリーがロシアとの協力を深めようとしているのには、ロシア産のガス依存度が高いという事情があります。
IMF=国際通貨基金によるとロシア産のガスの供給が止まった場合、ヨーロッパの中で経済への打撃が最も大きいのはハンガリーで、試算では最悪の場合、国内総生産が6%縮小する可能性があると分析しています。
エネルギーを武器にヨーロッパに揺さぶりをかけるロシアに対し、EUはロシアに対する圧力を強めたいものの加盟国の理解を得るのは難しく、ガスの輸入禁止までは踏み出せない苦しい状況が続きそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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