【解説】ウクライナ「ロシア軍はクリスマスに撤退を」提案の思惑(油井'sVIEW)

NHK
2022年12月14日 午後2:16 公開

オンラインで行われたG7首脳会議に出席したゼレンスキー大統領は、プーチン大統領に「私はロシアに対し外交的な解決に向け具体的かつ有意義な一歩を踏み出すよう提案する。クリスマスに国際的に認識されているウクライナの領土から、ロシア軍が撤退を開始することが正しい。もしロシアがウクライナから撤退すれば敵対行為の放棄が保証されることになる」と提案を行いました。

またゼレンスキー大統領は「クリスマスは平和を考える時だ」と語り、外交的な解決、いわば和平交渉に向けた一歩としてロシア軍の撤退の開始を呼びかけたのです。

外交的な解決をめぐってはゼレンスキー大統領が10月初めに「プーチン大統領との交渉は行わない」と発表しました。

しかし、これに対してロシア側から「ロシアは和平交渉に前向きなものの、ウクライナが拒否している」という主張が展開され、ウクライナのかたくなな姿勢が原因で、戦争が続いているという印象が広がりかねないと欧米から懸念の声が上がっていました。

ゼレンスキー大統領はそうした懸念を払拭するため、今回、あえて外交的な解決に前向きな姿勢を打ち出すとともにプーチン大統領に圧力を加える狙いと見られます。

「4つの州はロシアのもの」プーチン大統領の強硬な姿勢にG7は批判

今回のG7の声明でも「我々は今日まで、ロシアが平和に向けた取り組みに関与している証拠を目にしていない」とロシアを厳しく批判しています。

ドイツ ショルツ首相

<ドイツ ショルツ首相>

G7の中でプーチン大統領との対話を重視し、今月も電話会談したドイツのショルツ首相も「プーチン大統領が変わらないことが一つある。力によってウクライナの領土を奪いたいということだ。とても憂鬱にさせる。ロシア側に多大な犠牲が出ているのに何も変わらないからだ」と述べているのです。

G7は今後もウクライナへの支援を続ける方針を確認しました。

ただプーチン大統領がウクライナの領土の支配を断念するときが来るのか、その出口は見えないままです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分44秒あります)

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