ウクライナ情勢は、4日までシンガポールで開かれていた、各国の国防相が参加した国際会議、「アジア安全保障会議」でも大きな議題の1つでした。
(「国際報道2023」で6月5日に放送した内容です)
議論を呼んだのは、こちら。
インドネシア国防相が提唱したウクライナの和平案でした。
「私は和平案を提示する。まず、停戦の実現だ。 双方が現在の場所で敵対行為を停止することだ」
インドネシアが提唱したこの和平案。ロシア軍がウクライナの領土から撤退するものではないため、大きな波紋を広げました。
まず、同じ壇上にいたEUのボレル上級代表が、インドネシアの国防相に向かって直ちに次のように反論したのです。
「同僚の皆さん。確かに、私たちは、ウクライナに平和をもたらす必要がある。 しかし、それは"公正な平和"だ。墓地や降伏による平和は必要ない」
ボレル氏は、カによって現状を変更するやり方は認められないとして、戦争の終結自体よりも、どう戦争を終わらせるかが重要だと強調したのです。
この会議に参加したウクライナの国防相も「まるでロシアの提案のようだ」と発言し、インドネシアの和平案を拒んだのです。
酒井キャスター:ウクライナの和平をめぐっては、最近、中国やブラジルなども特使をウクライナに送るなどしていますが、インドネシアも含めてロシア・欧米のどちらにもくみしない国々の動きも目立ってきましたね。
油井キャスター:そうですね。
ロシア・欧米のどちらにもくみしない、いわゆるグルーバル・サウスからも和平を求める声が高まっているようです。
日本が議長を務めるG7は、こうしたグローバル・サウスの声が重要だとして、先にインドネシアなどをG7広島サミットに招待するなど、欧米やウクライナはグローバル・サウスを取り込む外交を活発化させています。
ただ、インドネシアの今回の和平案も含めてブラジルなどからも、停戦のためにはウクライナに譲歩を求める声が目立っていて、欧米やウクライナによるグローバルサウス外交は功を奏しているとはまだ言えない状況のようです。
油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は3分2秒あります)