ウクライナへの軍事侵攻後プーチン大統領の支持率が高まり、3月には83%に達したという世論調査の結果が発表されています。なぜこれほどまでに支持率が高くなっているのかを元モスクワ支局長で長年ロシアを取材している安間英夫解説委員が読み解きます。
安間解説委員:メディアを通じたプロパガンダが作用していることや欧米の制裁などに対しても、いわば北風のもとで国民がまとまったということが挙げられます。支持率が下がるときというのは市民の生活に具体的な影響が出たときで、少なくとも3月の段階では影響はありません。
酒井美帆(「国際報道2022」キャスター):支持率が高いということは、ウクライナへの軍事侵攻についても支持している人が多いということなのでしょうか。
安間解説委員:ロシア国内では「戦争」とか「軍事侵攻」という言葉は使ってはいけないことになっているので、3月に「ウクライナでの軍事行動を支持するかどうか」と聞いたところ「明確に支持する」「どちらかといえば支持する」があわせて81%、「明確に反対する」「どちらかといえば反対する」があわせて14%となっています。「支持する」のが非常に高いのはそもそも直接的な質問ではないという要因もあると思います。
安間解説委員:ウクライナでの軍事行動にどのような感情を感じるかという質問に対して、私たちが感じる「不安、恐ろしさ」31%「ショック」12%のようなものより、「ロシアへの誇り」が半数を超える51%と高くなっています。これはプロパガンダの作用と見られます。
安間解説委員:さらにこんな数字もあります。「なぜ多くの国がロシアを非難するのか」という質問には、我々が考える「ロシアが国際法やウクライナの権利を侵害したと考えているから」は16%にとどまっているのです。
これに対して多いのは、「米国やNATOに買収されたから」が36%、「西側マスメディアが誤った情報を流したから」が29%。「世界は常にロシアに反対しているから」が27%となっています。つまり非難される原因はロシアより欧米諸国にあると考えている人が多いということです。
酒井:ロシア国内でも反対のデモなどありましたが、そうした声は広がっていないのでしょうか。
安間解説委員:確かにロシア国内でも一部で軍事侵攻に反対する意見が伝えられています。しかし調査結果を見てみると、残念ながら軍事作戦に正当性があると主張するプーチン政権による国内向けのプロパガンダ=宣伝活動は、総体として国民の多くに浸透しているといわざるを得ないのではないでしょうか。ロシアでは、インターネットや スマートフォンが普及しているとはいえ、テレビを主要な情報源としている人たちは70%にのぼっています。ロシア国内と我々がいる外の世界の間では、ウクライナ情勢の見え方に大きな隔たりがあり、深刻な課題となっているのが現状です。