米機密情報流出 21歳州兵に“アクセス権限”で議論活発化(油井’s VIEW)

NHK
2023年4月17日 午後6:34 公開

機密文書を流した容疑者が21歳、しかも階級の高くない州兵だったことで、アメリカでは、驚きが広がっていて、機密情報の扱いをめぐる議論が活発化し始めています。油井キャスターの解説です。

(「国際報道2023」で4月14日に放送した内容です)

こちら、空軍の階級です。幹部の「将校」と現場の「兵士」に分けることができます。

トップは右側一番上の「大将」ですが、テシェイラ容疑者は、E3=上等兵で、下から3番目の階級。2019年に入隊したと見られ、軍務経験も浅いのです。

容疑者は機密情報を扱う部隊の所属ではあるものの、分析官ではなく、IT技術者で、 どう機密性の高い情報を手に入れたのかが捜査の焦点の1つになっています。

・容疑者は“最も機密性の高い情報”にアクセスできた

そうした中でアメリカの新聞『ワシントン・ポスト』が報じたのが、こちら。

機密情報を扱う国防総省のネットワーク 『JWICS』に、容疑者がアクセスする権限を持っていたと報じ、注目されています。

国防総省には機密情報をやりとりする専用のネットワークが2つあります。1つは、『JWICS』。もう1つは、『SIPRNET』と呼ばれるネットワークです。

アメリカは、機密情報を重要度に応じて『トップシークレット』、『シークレット』、『コンフィデンシャル』の 3つに分類していますがーーSIPRNETは『コンフィデンシャル』と『シークレット』の情報をやりとりできるネットワーク。

そして機密度が最も高い『トップシークレット』の情報もやりとりできるネットワークがこの『JWICS』で、ワシントンポストによりますと容疑者はここにアクセスする権限を持っていたということなのです。

・CIAのスノーデン元職員もかつて『SIPRNET』で情報入手

このネットワークをめぐっては、以前も問題になったことがあります。 それが、2010年に発覚した機密映像の流出事件です。

アメリカ軍のヘリコプターが上空から民間人を射殺する映像を外部に流出させたとして、アメリカ陸軍の上等兵が有罪になりました。この上等兵は、『SIPRNET』や『JWICS』にアクセスして情報を入手し、告発サイト『ウィキリークス』に渡していたとされます。

また、2013年にアメリカの機密文書を暴露してロシアに亡命したCIAのスノーデン元職員も『SIPRNET』などで情報を入手したとみられています。

今回の事件の真相は、まだ解明されていませんが、アメリカでは、過去の事件の教訓が活かされていないという厳しい声が早くも上がっていて、対策が急務となりそうです。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。