【解説】イランがロシアに最新無人機 さらにミサイルも供与か(油井'sVIEW)

NHK
2022年10月18日 午後9:48 公開

ウクライナの首都キーウで17日、複数の爆発があり、ウクライナ政府は、ロシア軍が自爆型の無人機による攻撃を行い、市民3人が死亡したと明らかにしました。

ウクライナ国防省は、ロシア軍が最近多用しているイラン製の無人機「シャヒド136」と見ています。  

シャヒド136

<シャヒド136>

ゼレンスキー大統領はロシア軍によるシャヒド136の使用頻度が極めて高く、ロシアはイランから2400機注文した情報があるなどと強い懸念を表明していました。

さらに懸念されているのは、シャヒド136よりも攻撃力の高い無人機「アラシュ2」をロシアが調達するという情報です。

「アラシュ2」は「アラシュ」の改良型で、イランが敵対するイスラエルを攻撃するために最近開発したばかりと言われています。

「シャヒド136」よりも飛行距離が長く、爆薬もより多く搭載できるとされ、欧米は警戒を強めています。

アメリカの新聞ワシントン・ポストは「イランが短距離弾道ミサイルをロシアに売却する計画」だと伝えました。

報道が事実であり無人機だけでなく弾道ミサイルもとなると、問題の深刻さが新たなレベルにあがることになります。

EU=ヨーロッパ連合はイランがロシアに対する兵器供与を増やしているのであれば問題だとして、17日開かれているEU外相会議でも協議する見通しです。

デンマーク コフォズ外相は「キーウの攻撃はイラン製の無人機が使用されたように見える。この残虐行為に我々は対処しなければならない」と述べています。

当のイラン政府はというと、「イランはこれまで何度も公表してきたように、ウクライナとロシアの戦争にどちらの側にも立たないし、どちらに対してもいかなる武器も供与していない」とロシアにイラン製の兵器が売却されているというのは、欧米側の作り話だとして完全否定しているのです。

一方、欧米は、ロシアが欧米による制裁を受けてミサイルなどの兵器を自国内で生産できず、イランに頼らざるを得ない状況だと見ています。

イランとロシアがどこまで連携を深めているのか。

欧米は、ロシアだけでなくイランに対するさらなる制裁措置も視野に対応を検討しています。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分46秒あります)

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