【解説】欧米と中国深まる分断 英元パイロット中国空軍を訓練?(油井'sVIEW)

NHK
2022年10月20日 午後6:18 公開

軍備の増強を続ける中国軍に対し、地域を不安定にしかねないとして、動向に日本や欧米が警戒していますが、その中国軍の育成にイギリス軍が関わっているという驚きの報道がありました。

BBCなどイギリスメディアの報道によりますと、イギリス空軍の戦闘機「タイフーン」などの元パイロット最大30人が中国を訪れ、現地で中国空軍の訓練にあたっていたというのです。

元パイロットたちは、中国空軍に対して「西側の軍用機とパイロットの運用の方法、それに台湾などをめぐる紛争時に重要となる情報について中国側の理解を手助けする仕事に関わっていた」としています。

その上で仕事の報酬としては年に24万ポンド、日本円にして4000万円あまりを得ていたということです。

イギリスメディアによりますと、軍事機密を漏らしてはいないとして、イギリスの法律には違反していないということなのです。

ただイギリス国防省は安全保障上、大きな問題だとしてこうした行為が繰り返されないよう規則を強化する方針だとしています。

広がる波紋 欧米と中国の分断深まるか

オーストラリアでは、このニュースを受けて、国防相が「非常にショックを受け動揺する」としてオーストラリア軍に該当者がいないか調査に乗り出す考えを示しました。

中国政府が自国の能力向上のため、外国人をリクルートする「千人計画」と呼ばれるプログラムが良く知られています。

これは国外の優秀な研究者や科学者を中国に招き、共同研究などを通して高度な技術や知識を得る代わりに報酬を提供するものです。

こちらも違法ではありませんが、欧米は、知的財産や最新技術が不当に中国に流出している疑いがあると警戒を強めているのです。

欧米と中国の間では「学術交流」や緊張緩和を目指した「防衛交流」がこれまで行われてきましたが、今や中国に対する欧米の不信が募り、交流の機運は低下する一方です。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分31秒あります)

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