【解説】ロシア 米ブリトニー・グライナー選手 "拘束は不当" (油井'sVEW)

NHK
2022年7月7日 午後6:39 公開

アメリカとロシアの対立が深まる中で、アメリカ女子プロバスケットボールのスター選手、ブリトニー・グライナー選手が拘束され、政治問題化しています。

ブリトニー・グライナー選手は、去年の東京オリンピックの決勝戦で日本と対戦したことで記憶に新しい選手で、その活躍でアメリカの金メダル獲得にも貢献しました。

オフシーズンにはロシアでプレーしており、2月ニューヨークからモスクワに向かった際の空港の荷物検査で、ロシアでは違法にあたる薬物を所持していた疑いで拘束・訴追されたのです。

一部報道によると所持していたのは、大麻由来の成分を含んだ電子たばこ用の液体と見られ、欧米では合法の商品とみられています。

そのためかアメリカ政府は「ロシアによる不当な拘束」と位置づけて、反発を強めているのです。

グライナー選手も今月、バイデン大統領に手紙を送って助けを求めており、ホワイトハウスは5日の記者会見で「彼女は不当に拘束されている。この問題は大統領の優先事項だ。我々は彼女を安全に帰国させるためあらゆる手段を尽くす」と述べ、バイデン大統領が手紙を読んだことを明らかにしています。

さらに先週のワシントンポストの社説では、グライナー選手を「ロシアの人質」と表現した上で「プーチン大統領がアメリカで有罪判決を受けたロシアの武器商人など服役中のロシア人との交換を提案する」という見方を示しています。

アメリカではロシアが政治的な目的でグライナー選手を拘束したという見方も出ていますが、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「政治的な動機はあり得ない」と強く否定しています。

インドネシアのG20外相会合には、アメリカのブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相がともに出席する予定ですが、この問題やウクライナの問題で対話するかどうか、注目されます。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分46秒あります)

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