米議会で設置が採決 “中国に対抗するための特別委員会“とは(油井'sVIEW)

NHK
2023年1月13日 午後11:11 公開

今月10日、アメリカ議会下院で採決が行われ、賛成多数で、中国の経済力や軍事的な脅威に対抗するための特別委員会を設置することが決まりました。この特別委員会は、去年(2022年)の中間選挙で多数派を奪還した共和党のマッカーシー下院議長が選挙の公約として設置を掲げていたものです。経済面での中国依存の見直しやアメリカ国内のサプライチェーン=供給網の強化、それに知的財産の保護などに向けて、調査や政策提言を行うとしています。

マッカーシー議長は「共産主義者の中国が突きつける脅威が深刻だということは確かだ。われわれはこれ以上中国に依存せず、ぜい弱であることもない」と述べ、アメリカ議会下院はバイデン政権に対し、これまで以上に対中国政策で強硬姿勢をとるよう求めるものと見られます。

(「国際報道2023」で1月11日に放送した内容です)
 
 

対中国の特別委員会の設置。アメリカ議会で中国政府に対する不信感が与野党問わず広まる中、365人の下院議員が賛成票を投じました。特別委員会の設置を求めた共和党だけでなく、民主党からも7割近い議員が賛成に回りました。

しかし、65人の民主党議員が反対票を投じたのです。その1人、民主党チュー下院議員は「この委員会は、アジア系アメリカ人への暴力につながる中国嫌悪や反中感情を招くために使用されるべきではない。また、委員会は、アジア系を捜査対象にする政策の推進ではなく、直接、中国政府の問題に集中すべきだ」と訴えています。

アメリカ国内では、新型コロナウイルスが発生した3年前以降、アジア系を狙った暴力、ヘイトクライムが急増しています。民主党の中には、共和党主導の特別委員会が反中感情をあおり、差別を助長するおそれがあると心配しているのです。

さらに、人種に基づいた捜査=レイシャルプロファイリングに対する懸念もあります。アメリカ司法省は、前のトランプ政権の時に、中国政府による産業スパイなどを取り締まる「チャイナ・イニシアチブ」という特別チームを立ち上げました。

しかし、アジア系、特に中国系の研究者や技術者からレイシャルプロファイリングで捜査の対象になっているという訴えが相次いだほか、大学や研究機関からも中国と学術交流をしただけで疑われたとして「チャイナ・イニシアチブ」の解体を求める声が強まったのです。

バイデン政権は、去年(2022年)、人権上懸念があるとして「チャイナ・イニシアチブ」の解体に踏み切るとともに、手法を変えて中国政府の違法行為を厳しく取り締まっていくと表明しました。

政治家達の強硬姿勢の裏で万が一、一般の人達の人権が脅かされるような事態になれば、本末転倒です。疑いの目は中国の政府や共産党に向けられるべきで、一般の人達の監視につながらないか注視していく必要がありそうです。
 
 


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は3分51秒あります)