アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席による初めての対面での首脳会談が14日、インドネシアで行われました。
アメリカ政府と中国政府は首脳会談の内容をそれぞれ文書で発表し、文書からはそれぞれがアピールしたい内容が透けて見えます。
中国側の発表で出てくるのは「四不一無意」、英語では「FIVE NOes」と訳されていることばです。
つまり「5つのノー」を改めてバイデン大統領に確認したと主張しているのです。
アメリカは
①新冷戦を求めない
②中国の体制変換を求めない
③中国に反対する同盟関係の強化を求めない
④台湾独立を支持しない
⑤中国と衝突する意図がない
中国側はこの5つを言葉だけでなく実際に行動に移すようアメリカ側に迫ったとアピールしています。
これに対して、アメリカ側の発表では「5つのノー」の言及はなく、むしろバイデン大統領がウイグルやチベットなど中国の人権問題やアメリカの労働者の利益を害する中国の経済手法に懸念を表明したほか、台湾に対する中国の攻撃的な行動に反対したとしています。
またウクライナ情勢をめぐってはアメリカ側の発表では「米中両首脳がウクライナでの核兵器の使用や核の威嚇に反対した」と発表したのに対して中国側の発表では「中国側は欧米がロシアと包括的な対話を行うことを期待する」と記されていて、アピールしたい点の違いが鮮明になっています。
気候変動や食料安全保障は米中の政府間対話で一致も…"見返り"求める?
しかし対話では一致したものの、同床異夢の可能性が高いと言えます。
というのもアメリカ側は台湾や人権の問題では妥協しない立場を維持しつつ、気候変動やウクライナ情勢それに北朝鮮の核問題などで中国側の協力を引き出したい考えです。
しかしアメリカの当局者によりますと、中国側はこれまで気候変動や北朝鮮の核問題などで協力する見返りをアメリカに暗に求めていて、アメリカ側の譲歩を迫ってきたそうなのです。
アメリカと中国は、協力の可能性を模索するため対話を続けていく構えですが、双方の水面下での駆け引きも今後、活発化しそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分40秒あります)