放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」をウクライナ側が準備しているという主張をロシアが積極的に拡散・発信しています。
ロシア政府は、「われわれの情報では、ウクライナの2つの組織が『汚い爆弾』をつくるよう指示されている。製造は最終段階にある」とウクライナ側が汚い爆弾を準備しているという主張を一段と強めています。
さらにロシアは、この問題を国連安保理で協議する姿勢も示していて、国際的にアピールする構えです。
警戒強めるウクライナと欧米 ウクライナはIAEAを招待も
これに対してウクライナ政府が懸念しているのが、ロシアによる「偽旗作戦」で、ロシアがみずから「汚い爆弾」を使用する恐れがあるとしています。
ゼレンスキー大統領は「ロシアが『ウクライナは何か準備している疑いがある』と主張する時、それはロシアがその準備を全て終えたという意味だ」とまで述べたのです。
ウクライナ・欧米側は、ロシアの動きに警戒を強めています。
現時点ではロシアが「汚い爆弾を使用する兆候は見られない」としているものの、アメリカ政府は「もし、プーチン大統領が『汚い爆弾』を使えば、彼の残虐性を示すことになる。 ロシアには『汚い爆弾』でも、核兵器でも、使用すれば、重大な結果をもたらすと明確に伝えてきた」と警告を発しました。
互いの情報発信は激しさを増していて、ウクライナ政府はロシアの主張が虚偽であることを証明しようとIAEA=国際原子力機関を招待しました。
これを受けてIAEAも近くチームをウクライナに派遣し、ロシアが主張する2つの組織が活動する核関連施設2か所を調査する見通しです。
汚い爆弾をめぐるロシアとウクライナの攻防。
情報戦や心理戦の一環と見られていますが、万が一、使用されれば核の使用に道を開くことにもなりかねず、警戒はいっそう強まることになりそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分14秒あります)