カナダのメディアが情報機関の情報として報じたのは、カナダの選挙に関する「中国による介入疑惑」です。
2019年のカナダ総選挙の際にトロントにある中国総領事館の指示によって、11人の候補者に対して資金およそ25万カナダドル(日本円で約2700万円)が送金されたり、中国政府の多数の工作員が選挙スタッフとして送り込まれたりしたとしています。
これは中国政府に対して厳しい意見を持つ政治家を当選させないねらいだというのです。
資金提供などを受けたと見られる候補者11人は特定されていませんが、与野党両方の候補者がいたとされています。
この報道を受けてトルドー首相は「残念ながら中国であろうとなかろうと、世界の国が私たちの機関や民主主義に攻撃的な争いを仕掛けている。外国による選挙干渉を防ぐための戦いに投資を続けていく」という声明を発表したのです。
これに対して中国政府は「カナダ政府は中国とカナダの関係を損ねる発言をやめるべきだ。中国政府はカナダの内政に関心がない」と反論しました。
疑惑を否定した中国政府ですが、選挙への干渉といって思い出されるのがロシアです。
プーチン大統領に近いプリゴジン氏の組織が偽情報などを発信して2016年の大統領選挙に干渉したのは有名で、これまでの主要なプレーヤーはロシアでした。
しかし今回の件もあって選挙干渉の新たなプレーヤーとして中国に対する警戒が高まっています。
民主主義の根幹とも言える選挙をどう守っていくのか。日本を含めた民主主義国家は新たな課題を突きつけられているようです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分27秒あります)