【解説】アメリカ・ウクライナ 兵器めぐり意見の違いか (油井'sVIEW)

NHK
2022年7月26日 午後6:56 公開

アメリカは軍事侵攻後、ウクライナ軍に兵器を供与し続けています。

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その兵器の量や種類をめぐり、アメリカとウクライナの間では意見の違いも浮かび上がっています。 

「まだ足りない」ウクライナが求める兵器

ウクライナの前線でこの2~3週間、効果を発揮していると言われているアメリカが供与した

ハイマース=高機動ロケット砲システムに関してアメリカ政府は新たに4基供与し、あわせて16基にすると発表しました。

しかしウクライナ側は「効果的な反転攻勢のためには少なくとも100基が必要だ。そうすれば戦況を一変できる」と述べ「まだ足りない」と訴えているのです。

さらにレズニコフ国防相は、現在の射程70キロに加えて新たに最大射程が300キロあるミサイルも供与して欲しいと訴えました。

これに対してアメリカのサリバン大統領補佐官は「射程300キロのミサイルはバイデン大統領がウクライナに供与しないと決めた」と明らかにした上で、「アメリカの重要な目標の1つは第3次世界大戦に至るような環境を決して作らないことだ」と述べたのです。

慎重一転 戦闘機についてはアメリカも前向きに

ただウクライナへの戦闘機の供与については、アメリカはこれまで慎重な姿勢でしたが、先週、政府や軍の高官からは前向きな発言が相次ぎました。

例えば、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者会見で「ウクライナに戦闘機の供与が可能か国防総省が調査している」と発言したほか、アメリカ空軍のブラウン参謀総長も「アメリカ製かヨーロッパ製の戦闘機を供与する可能性がある」と発言したのです。

ただ直ちに欧米の戦闘機を供与するわけではなく、ウクライナ空軍が現在保有しているロシア製の戦闘機を中長期的に欧米の戦闘機に入れ替える狙いと見られ、詳細を今後、ウクライナ側と協議していくとしています。

その一方でウクライナ側が供与を求めてきたアメリカ製の無人攻撃機「グレイ・イーグル」については、バイデン政権は無人機の最新情報がロシア側に漏れる恐れも警戒し、供与には難色を示していると報じられています。

ウクライナ軍は、この夏には反転攻勢を本格化したい意向ですが、それも欧米が供与する兵器次第で、アメリカとウクライナの間で今後も難しい調整が続くことになりそうです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は3分14秒あります)

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