旧ソビエト圏、特に中央アジアの国々の出身者をロシアが徴兵する動きが、波紋を広げています。
8月に入りロシアのメディアは、ロシアに住むウズベキスタンの出身者たちが会合を開き、ウクライナでの軍事作戦にロシア兵として参加する計画があると報じました。
会合でウズベキスタン移民の代表は「私たちはロシアに住み働いている。私たちの生活を正当化するための戦いに参加しなければならない」と発言したというのです。
かつてソビエトの構成国だったとはいえ、今は独立国となっているにもかかわらず「ロシア兵として戦いに参加する」というウズベキスタン出身者たちに対し、モスクワにあるウズベキスタン大使館は「ウズベキスタン政府は、ロシアに住む同胞に外国の領土で軍事作戦に参加しないよう警告する。ウズベキスタンの法律に違反し犯罪である。私たちの同胞には勧誘に応じず注意するよう強く求める」と異例の警告をしました。
というのもロシアのメディアは、ロシアに住む中央アジア出身者や少数民族による志願兵の部隊がこれまでに40以上作られたと報じているのです。
しかしウズベキスタン政府の異例の警告に加えて少数民族の間からも徴兵に反対する声が出ており、専門家の間ではロシア軍の深刻な兵力不足は続くという見通しが有力です。
ウズベキスタンでは、9月中旬、ロシアと中央アジアの国々が参加する「上海協力機構」の首脳会議が開かれる予定です。
プーチン大統領も出席し、ウズベキスタンなど中央アジアの国々から軍事侵攻への理解と協力を得る狙いと見られていますが、旧ソビエト圏の結束に齟齬(そご)がみえ始めています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分32秒あります)