ウクライナ政府は反転攻勢を本格化させる一方で、神経を尖らせているのが「ウクライナ社会に潜むロシアの協力者やスパイ」の存在です。
ウクライナ保安庁のウェブサイトには連日のように国家反逆やスパイの疑いでロシアの協力者を拘束したというニュースを掲載しています。
例えばどういうニュースがあるかというと、ウクライナ南部でウクライナ軍の動向、特にアメリカ軍から供与された兵器「ハイマース」がどこにあるかや位置情報をロシア側に伝えていた疑いで拘束したというもの。
またロシア軍が占領する地域でロシアの支配に協力した疑いのあるウクライナ人10人だとして、顔写真などを公表したなどというものがあります。
ロシア化の裏にいる協力者のあぶり出しに力を入れるウクライナ政府
保安庁はさらに動画でも注意を呼びかけており、幹部が動画に登場してロシアに協力しないよう警告までしているのです。
ウクライナ政府は、ロシアが東部や南部で占領を続けてロシア化を進めている背景には協力するウクライナ人がいるからだと見ていて、協力者・スパイのあぶり出しに力を入れているのです。
ロシアの占領に協力していたウクライナ政治家の殺害事件も
現地メディアの報道によると殺害されたのはオレクシー・コワリョフ氏です。
もともとはゼレンスキー大統領と同じ政党の議員でしたが、軍事侵攻後、ロシアのヘルソン占領に協力したとされています。
ウクライナ政府からは「裏切り者」として反逆罪の疑いで捜査対象となっていました。
ウクライナの捜査機関は「コワリョフ氏はSNSにウクライナの一部をロシアに併合させようと投稿していた。国民の意見に影響を与えるためだ」と述べています。
コワリョフ氏の殺害はロシアの占領に反対するウクライナの抵抗勢力による犯行とも伝えられていますが、その詳細は不明です。
ロシア政府は、占領地域でロシアに協力するウクライナ人を利用することで、支配を着実に進めたい思惑と見られますが、その手法はウクライナ社会に分断と憎悪を招きかねず、憂慮される事態となっています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分53秒あります)