欧米と対立するロシアと北朝鮮の接近ぶりが、ロシアの軍事侵攻後に顕著となっています。
軍事侵攻後に国連で行われたロシアを非難する決議では、ロシアを含む5か国が反対票を投じましたが、アジアの中で唯一反対票を投じたのが北朝鮮でした。
その北朝鮮は、ウクライナ東部で親ロシア派の武装勢力が一方的に独立を表明した2つの地域「ルガンスク人民共和国」「ドネツク人民共和国」をプーチン政権の意向に沿う形で7月、独立を承認しています。
北朝鮮の外交官はモスクワで親ロシア派の代表と何回か会談を行っており、北朝鮮は親ロシア派の地域に北朝鮮の労働者を派遣して町の再建にあたる合意も交わしているのです。
親ロシア派の指導者プシリン氏が北朝鮮を訪れてキム・ジョンウン(金正恩)総書記と会談する案も話し合われたとしています。
そして今回、北朝鮮はロシア側に弾薬などを供与したことで、緊密さのレベルが一段上がったと言えます。
【解説】ロシアが兵器不足で北朝鮮から兵器調達? (油井'sVIEW)
北朝鮮は、軍事的に110万人という大規模な陸上兵力を持ち、弾薬も大量に保有していると言われており、砲弾も旧ソビエト式の規格の152ミリのため、ロシア軍がそのまま戦場で使用できると見られています。
北朝鮮もロシアを味方にすれば国際社会と対抗できるという思惑が
一方の北朝鮮としてはここでロシア側に恩を売ることで、中国に加えてロシアにも北朝鮮の後ろ盾になってもらいたい狙いがあると見られます。
北朝鮮は核とミサイルの開発を推し進めており、近く核実験やICBMの発射実験を行うという見方も出ています。
もし実験を強行すれば、日本や欧米を始め多くの国々が強く反発し国連安保理で北朝鮮に対する新たな制裁決議の採択を求めるものと予想されますが、北朝鮮としてはロシアを味方につけることで拒否権を発動してもらい新たな制裁などを阻止する狙いがあると見られます。
ロシアと北朝鮮、さらには中国の3か国が関係を強めているのに対して、日本、アメリカ、韓国もそれに対抗するかのように結束を強めており、分断の構図がより鮮明になりつつあります。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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