ウクライナ政府が近く乗り出すと見られる反転攻勢に、世界の目が注がれています。
そして、同時に注目なのが、ウクライナ政府が提唱する、各国を招いた「平和サミット」の開催です。
(「国際報道2023」で5月25日に放送した内容です)
ゼレンスキー大統領は、先日行われたG7広島サミットの中で、ことし7月に平和サミットを開催したいと各国に提案し、協力を求めたのです。
ゼレンスキー大統領は、「ロシア軍の撤退」や「ウクライナの領土保全」など、10項目からなる和平案を去年11月に提唱していて、「平和サミット」を開催することで、ウクライナ主導で和平に向けた動きを作り出す狙いがあると見られています。
これを受けて、デンマークの外相は、今週、「平和サミット」をデンマークで開催する案を明らかにし、「平和サミットは、ウクライナを支援する国々だけでなく、インド、ブラジル、中国などの国々の関与も必要だ」と述べました。
ウクライナ政府も、平和サミットにはできるだけ多くの国々、特にグローバル・サウスと呼ばれる国々に参加して欲しいと、外交的な働きかけを強めています。
7月は、リトアニアでNATOのサミットも開かれ、ウクライナの加盟をめぐって協議される予定で、ゼレンスキー大統領は、NATOサミットと平和サミットで、軍事・外交両面の成果を目指しているとみられます。
酒井キャスター:これに対して、ロシア政府も24日にお伝えしたように、今週、特に外交活動を活発化させていますよね。
油井キャスター:プーチン大統領は、モスクワで旧ソビエト5か国の首脳と会談し、ミシュスチン首相は中国を訪問しました。
さらに、メドベージェフ前大統領はベトナム、コロコリツェフ内相はサウジアラビアを訪問し、ウクライナ情勢も協議したとしているのです。
また、こちらは、ワシントンにあるロシア大使館が、今週SNS上に掲載した画像で、ロシア政府が、7月に「ロシア・アフリカサミット」を自国で開催するのを前に、アフリカ各国の大使を招いたレセプションだとしていて、“ロシアは孤立していない”とアピールしているのです。
ウクライナとロシアは、グローバル・サウスを舞台にした外交でも争っていて、ゼレンスキー大統領にとっては、平和サミットを予定通り7月に開催できるかどうかが、外交力の試金石となりそうです。
油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分58秒あります)