【解説】「ゼロコロナ」抗議デモ中国政府が情報統制か 報道せず(油井'sVIEW)

NHK
2022年11月30日 午後3:24 公開

中国では各地で厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策に対して大規模な抗議活動が行われ、集まった人たちが「自由がほしい」などと訴えていました。

中国の国営メディアは今回のデモを一切伝えておらず、中国政府による情報統制がうかがえます。

代わりに伝えられているのは、中国政府が封鎖された地域の住民に食料支援を行うなど当局による対応ぶりです。

さらに国営メディアは「コロナの拡大が加速し予防と制御の難しさが増している。全員が団結し、予防と制御の強固な壁を築けば、私たちは必ず最終的に勝利する」と国民に団結を訴えています

国民の不満や怒り きっかけは“非常口が施錠され消火活動が妨げられた" SNSで拡散された情報

今回のデモで表面化した国民の不満や怒りは、こうした「情報統制」やゼロコロナ政策に基づく「過剰な対策」に向けられたものでした。

そもそものきっかけは、新疆ウイグル自治区で10人が亡くなった高層住宅の火災でしたが、ゼロコロナ政策によるロックダウンで、非常口が施錠・封鎖され消火活動などが妨げられたという情報がSNSで拡散

またSNSでは当局の過剰な対策の例として北京で撮影されたとされる、鎖で縛られ非常口があかない映像なども出回り、当局の対応に批判の声が広がりました。

その結果、当局は、非常口の封鎖をやめるなどの一部の規制を緩和したものの、ゼロコロナ政策自体には変わりなく、国民の不満や怒りが和らぐかは不透明です。

批判の矛先を欧米など外国に向けるか懸念

習近平指導部は今回のデモで退陣要求を突きつけられたわけですが、異例の3期目に入り政権基盤を固めたはずの習主席にとっては大きな痛手のはずです。

そうしたことから懸念されるのは、批判の矛先が欧米などの外国に向けられるのではないかということです。

というのも中国政府は、中東や旧ソビエト諸国で起きたカラー革命や民主化運動の背後に外国の敵対勢力がいるという認識をたびたび示し、香港でも外国の勢力と結託したとして、民主化運動を取り締まってきました。

その習主席は、12月1日に中国を訪れるEU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領と会談する見通しです。

欧米が中国政府に対して、デモの権利を認めることやゼロコロナ政策の緩和を訴える中で、習主席がどのような発言をするのか

国際社会はもとより、当局の情報統制にあえぐ中国の人たちが、習主席の発言を最も聞きたがっているかもしれません。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


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