“ロシアの次の標的”とも言われるウクライナの隣国モルドバにヨーロッパ各国の首脳が集まり、ウクライナに加えてモルドバを支援する姿勢も打ち出されました。一方で、「モルドバ国内をロシア政府と連携して不安定にさせた」などとしてモルドバの親ロシア派政党のショル氏やその関係者たちに科された制裁に対し、ロシア政府やモルドバ国内の親ロシア派が反発を強めることが予想されています。
(「国際報道2023」で6月2日に放送した内容です)
旧ソビエトのモルドバは、長年ロシアとヨーロッパの間で揺れ動いてきました。現在のサンドゥ大統領は親欧米派で、EU加盟を目指し、ロシアと対立しています。
2023年2月には「ロシアがモルドバの政権転覆を企てているとする情報を得た」と発表し、ロシアの動きに警戒を強めてきました。
こうした中、EUとカナダは、今週「モルドバ国内をロシア政府と連携して不安定にさせた」などとしてモルドバの親ロシア派に対する制裁を発表しました。
制裁を科されたのは、モルドバの親ロシア派政党「ショル」を率いる政治指導者ショル氏とその関係者たちです。
アメリカとイギリスもすでに、このショル氏を「ロシア政府の協力者」として制裁の対象にしていました。
ショル氏の政党は親欧米派のサンドゥ政権を批判する大規模な抗議デモをこれまで何回も行っていて、2023年3月には警察と衝突して50人以上が拘束されています。
サンドゥ政権は、このショル氏がロシアと連携して政権転覆を企てていると見ている模様で、欧米は今回、足並みを揃える形でサンドゥ大統領の政敵とも言える人物や関係者の制裁に踏み切ったことなります。
酒井キャスター:この制裁に対して、今後、ロシア政府やモルドバ国内の親ロシア派からの反発が強まることも予想されますね。
油井キャスター:モルドバ国内の分断、いっそう深まることが懸念されそうです。さらに懸念されているのが、フェイクニュースの増加です。ことし(2023年)大きなニュースになったのは、こちらの動画です。
隣国ルーマニアがモルドバとの国境沿いに軍を集結させているとしてこの動画がネット上で拡散され、ルーマニア政府が偽情報だと否定する騒ぎになりました。
欧米の一部の専門家は、モルドバ国内を不安定にさせたいロシアによる情報戦という見方を示していますが、背後関係は不透明です。
モルドバでは、来年、大統領選挙が行われます。
ロシアとヨーロッパの間で揺れ動くモルドバの人達の決断が注目されますが、偽情報などによる外国からの選挙干渉も懸念が高まりそうです。
油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分52秒あります)