アメリカは、核とミサイルの開発を続ける北朝鮮がサイバー攻撃によって世界各地から現金や暗号資産を盗み開発の資金源にしているとみて、新たな対策に乗り出しています。
対策の1つが「各国のサイバー担当者の能力強化」です。
これはアメリカ国務省が始めたもので、北朝鮮のサイバー攻撃に対応できる専門家を育成するため 各国の政府や企業のサイバー担当者を対象にアメリカが訓練・研修に乗り出したのです。
この研修制度は去年始まったもので、これまでに6か国の担当者たちを訓練したとしています。
訓練の対象国は富裕国ではない国とされ、途上国を中心に訓練を施しているとみられます。
なぜアメリカは途上国でサイバー担当者の訓練や研修に乗り出したのか
アメリカ政府は、銀行などの金融機関が2015年から20年の間に北朝鮮の偵察総局のハッカー集団によってサイバー攻撃を受けたと見られる国と地域を発表しており、日本も入っており、またアフリカなど途上国も多いのです。
特にバングラデシュでは、2016年に中央銀行が北朝鮮によるサイバー攻撃を受けて8100万ドルを盗まれたと見られていて、アメリカでは、こうした事件を防ぐためにも、途上国のサイバー担当者を育成する狙いがあるとみられます。
さらにアメリカは、北朝鮮が近年は特に世界各国の暗号資産を狙って、実際に成功を収めているとみていて危機感を強めています。
ニューバーガー大統領副補佐官は「サイバー攻撃が重要な資金源になっていることから我々は対策を取らなければならない。ことしに入って暗号資産の取引所に制裁を発動するなど新たな対策に乗り出していてさらに強化していく」述べているのです。
非核化交渉は北朝鮮が対話に応じず暗礁に乗り上げていることから、アメリカは国際社会と連携して、資金源のサイバー攻撃を何とか食い止めたいとしていますが、対策の成果が出ているのかは今のところ不透明です。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分25秒あります)