“ロシアの法律と同じ” 大規模抗議活動で揺れるジョージア(油井’s VIEW)

NHK
2023年3月10日 午後7:35 公開

ロシアの隣国、ジョージアで、にわかに緊張が高まっています。

外国から資金提供を受ける団体に登録を義務づける法案をめぐり、「ロシアの法律と同じだ」などと大規模な抗議活動が行われたことを受けて、与党は3月9日、法案を取り下げると発表しました。

ただ、野党側は今後も抗議を続ける姿勢を示していて、混乱が収束に向かうか不透明です。

欧米側かロシア側か、EU加盟を目指すジョージアはいま、揺れ動いています。油井キャスターの解説です。

(「国際報道2023」で3月9日に放送した内容です)

ジョージアは、政権与党が「ジョージアの夢」、野党が「統一国民運動」です。

「ジョージアの夢」は、欧米との関係を重視しつつロシアとの関係修復に前向きな立場。一方の「統一国民運動」親欧米、対ロシア強硬を鮮明にしています。

そして、最近、この政権与党がロシア寄りの姿勢を強めているのではないかと見られてきたのです。

その背景の一つは、おととし、野党の指導者で親欧米・反ロシアの立場だったサーカシビリ元大統領の逮捕です。

また、ロシアによるウクライナの軍事侵攻後も現政権はロシアに対する制裁には加わりませんでした。

そうした中で、今回、与党が提出した法案は欧米の影響力を排除しロシアにさらに接近する手段と見られ、野党を中心に反発が強まり、その反発は、欧米の間にも広がっています。

法案が可決された3月7日、アメリカ政府は

「きょうはジョージアの民主主義にとって暗黒の日だ」

「この法案の推進は、ジョージアと欧米の関係を損ない、将来の関係を危険にさらす」

との声明を発表しました。

ロシア寄りを強めるイワニシビリ氏とは

欧米の間では、政権与党がロシア寄りの姿勢を強めている背景に、与党「ジョージアの夢」の創設者、イワニシビリ氏がいるという見方が出ています。

イワニシビリ氏はロシアとの関係が深いジョージア有数の富豪として知られ、2012年に首相に就任し、ロシアとの関係改善に舵を切った人物で、今も政権与党で絶大な影響力があるとみられています。

ヨーロッパのシンクタンク「欧州外交評議会」は、去年12月の報告書で

「ジョージアの世論は、大半が欧米寄りにもかかわらず、イワニシビリ元首相がジョージアをロシアの勢力圏に導いている」と批判したのです。

今回の法案、国内外の反発を受けて、政権与党は、3月9日、撤回すると発表しましたが、混乱が収束に向かうかは不透明な上、欧米の間では政権与党のロシア寄りという懸念が残りそうです。


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分38秒あります)