欧米の退役軍人が“中国軍のパイロット育成” (油井’s VIEW)

NHK
2023年6月7日 午後6:34 公開

欧米や日本の間では、行動を活発化させる中国軍の能力増強に懸念が高まっていますが、その中国軍のパイロットたちを陰で育成してきた存在に欧米の退役軍人たちがいるとされ、欧米の間で問題になっています。

(「国際報道2023」で6月6日に放送した内容です)


今回、問題となったのは、ドイツです。
ドイツのテレビ局は次のように伝えています。

「ドイツ軍の元空軍パイロットが、中国軍のパイロットの指導を行っていることが取材で明らかになっています。論議を呼んでいるのは、ドイツの元空軍パイロットが、ドイツやNATOの機密情報を中国側にもたらす可能性はないのかという点です」

ドイツメディアによると、ドイツ軍の元パイロット数人が、高額の報酬と引き換えに中国に移り住み、中国空軍の戦闘機のパイロットの育成にあたっているというのです。

この問題、先にシンガポールで行われたドイツと中国の国防相会議でも議題となり、ドイツの国防相は中国側に対して、ドイツ空軍の退役パイロットを雇わないよう伝えたのです。

機密情報が中国側に漏れたかどうか不明で、ドイツ政府は、調査に乗り出したとしています。


酒井キャスター:中国軍が能力向上のため欧米の退役軍人を雇っている問題。
去年、イギリス軍の元パイロットたちが雇われていたとして、イギリスやアメリカで問題になったと、この番組でもお伝えしましたよね。

油井キャスター:はい。その後、イギリスやアメリカだけでなく、カナダとオーストラリアの退役パイロットも中国空軍から勧誘を受けていたことがわかり、各国で調査に乗り出す事態となりました。

イギリスの場合は、最大30人の元パイロットが、1人、年に24万ポンド、日本円にして4000万円あまりで中国空軍の訓練にあたっていたとされています

一方で、機密情報を漏らすなどの違法性は確認されていませんが、アメリカの場合は、海兵隊の元パイロットが移住先のオーストラリアで逮捕されました。

海兵隊の元パイロットは、南アフリカの航空学校などを拠点に、中国軍のパイロット達に高額の報酬と引き換えに航空母艦・空母の着艦の仕方などを教えたとされています。

今回のドイツの問題を受けて、中国軍が欧米の元パイロットを狙って組織的に勧誘活動を進めてきた疑いが強まっています。

欧米は、中国軍への懸念を高める中で対策を迫られているようです。
 


油井秀樹(「国際報道2023」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


https://movie-a.nhk.or.jp/movie/?v=g7430z3g&type=video&dir=iYt&sns=true&autoplay=false&mute=false

(この動画は2分52秒あります)