“戦争犯罪を告発する” 「ワグネル」元指揮官が語る残虐性とは(油井'sVIEW)

NHK
2023年1月19日 午後6:11 公開

軍事侵攻で、存在感を高めているのが、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」です。その「ワグネル」の戦争犯罪を告発するという元指揮官のアンドレイ・メドベージェフ氏の動向が注目されています。油井キャスターの解説です。

(「国際報道2023」で1月16日に放送した内容です)
 

 
ロシアの人権団体によりますと、メドベージェフ氏は、去年(2022年)ウクライナ東部の前線で部隊を率いていた元指揮官ですが、ワグネルに恐れを感じ、1月にロシアを離れてノルウェーに亡命を申請したということです。

メドベージェフ氏:ワグネルは我々を人として扱わず、大砲の餌食になるよう小銃だけを持たせて装甲車の前に放り出した。反逆者や兵役を拒否した者を新兵の目の前で銃殺した事件も知っている。

・「裏切り者は罰せられる」ウクライナ側に降伏した戦闘員を処刑か

メドベージェフ氏がワグネルの残虐性に恐怖を覚えたという事件がありました。メドベージェフ氏と共に現地に派遣されたワグネルの戦闘員がウクライナ側に降伏したことから、ワグネルが去年「裏切り者は罰せられる」としてハンマーで殴って殺害する様子を撮影し、その動画をネット上に拡散したのです。

メドベージェフ氏は、この男性以外にもワグネルが多数の人間を裏切り者として処刑していたことなど、その残虐性・違法性を証言する用意があると主張しているのです。

ワグネルはこれまでも、ロシア国内の刑務所で外国人受刑者まで雇って戦場に送ったことが明らかになるなど、その違法性が改めて注目されています。
 

・ワグネルはセルビアなどで兵士の勧誘を目指すのか

さらにワグネルが、今、戦闘員を補充するため外国で勧誘を進めているという懸念が浮上しています。

アメリカ国務省の高官は、先週、ヨーロッパの中でロシアに近い国として知られるセルビアを訪問。大統領と会談し警鐘を鳴らしたのです。
 

アメリカ国務省 デレク・ショレ顧問:われわれはワグネルに対する懸念を伝えた。ワグネルはセルビアなどで兵士の勧誘を目指していて見過ごせない
 

ワグネルは、これまでもアフリカや中東で虐殺や人権侵害に関わったなどとして制裁の対象になっています。
 

そんなワグネルをロシア大統領府のペスコフ報道官は15日、正規軍と同じ「英雄」と評していて、国際法や人権をものともしない今のプーチン政権を物語っているようです。
 
 


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


(この動画は2分56秒あります)