ロシアは兵器不足に陥っていると言われていますが、欧米側も兵器や弾薬の在庫不足と生産不足が大きな問題となっています。ウクライナ側の需要に生産が追いつかないのです。
NATOのストルテンベルグ事務総長は「欧米の防衛産業は既存の生産能力を活用して兵器を増産する。さらに生産能力を拡大するために投資が必要で、長期戦に備える。ウクライナへの軍事支援と自国の防衛と抑止のための在庫補充を両立させる」と話しました。
この在庫不足と生産不足は世界最大の軍事大国アメリカも例外ではなく、オースティン国防長官は「兵器によっては数週間や数か月かかり、数年かかるものもある。アメリカはウクライナにハイマースを18基追加供与するが、実際に生産し導入するまでには2~3年かかる」と述べています。
アメリカのシンクタンクCSIS=戦略国際問題研究所によりますと、アメリカの兵器はウクライナに大量に供与した結果
・ハイマース
・ジャベリン
・スティンガー
・M777榴弾砲と155ミリの砲弾
が在庫不足の状況だと警鐘を鳴らしているのです。
特にアメリカ政府は、消耗戦に適応するため欧米の防衛産業の育成・拡大を急ぐ方針で、そのためにも各国に国防費の増大を要求しています。
欧米に強力な防衛産業を復活し誕生させることで、長期戦に備えるだけでなく、アジアやアフリカに兵器を売却することで影響力を獲得してきたロシアに対抗し、ロシアの防衛産業を弱体化させ、ロシアの影響力をそぐねらいと見られる欧米。
軍事侵攻を機に世界の兵器市場の勢力図が塗り変わるかもしれません。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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