ロシア軍によるウクライナへの侵攻から24日で9か月。
今週はウクライナでかつて起きた惨劇を追悼する記念日「ホロドモール」にもあたります。
1932年から33年に起きた大飢きんにより数百万人が亡くなったとされるもので、ウクライナ語で飢え「ホロド」と殺害の「モル」の造語で「飢えによる虐殺」という意味です。
ウクライナでは、当時のソビエトのスターリン政権がウクライナの農村地帯から食料を没収したことによる計画的な飢餓で、ソビエトによる「ジェノサイド」だったと位置づけてられています。
その惨劇から90年。
ローマ、カトリック教会のフランシスコ教皇は「ウクライナの人たちを追悼しましょう。1932年から33年にスターリンによって人為的に引き起こされた恐ろしいジェノサイドであるホロドモールの記念日を迎えます。当時のジェノサイドの犠牲者とともに現在の侵攻で苦しんでいる子ども、女性、高齢者、あまりにも大勢のウクライナの犠牲者に祈りを捧げましょう」と述べ、90年経ちウクライナは再びロシアによって苦しめられていると指摘したのです。
またアメリカでも「ホロドモール」の犠牲者を追悼する式典が開かれ、ロシアを非難する声が聞かれたほか、バイデン大統領も23日「私たちはホロドモールの犠牲者を追悼する。そして民主主義のためにロシアの攻撃に抵抗し続けている勇敢なウクライナの人々に敬意を表すとともにウクライナの主権と領土保全に関与し続ける」という声明を発表しました。
「ホロドモール」をめぐっては欧米の10を超える国でも、議会でジェノサイドと認定する決議などが採択されてきたのに対して、ロシア政府は飢餓はソビエト全土で起きていたなどと反論し、ホロドモールやジェノサイドという認識を否定してきました。
ただ今回の軍事侵攻でプーチン政権は電力や医療など一般市民に必要なインフラを攻撃する戦略に舵を切っていて、軍事侵攻は新たな「ホロドモール」ではないかという声が広がっています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分50秒あります)