プーチン大統領がウクライナでの戦いにベラルーシを参戦させたいのではないか、という見方が出ています。
これまでベラルーシのルカシェンコ大統領は、ベラルーシ軍を直接参加させることは拒んできました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアとベラルーシの国境防衛は常に優先事項だ。あらゆる可能性のあるシナリオに備えている。ベラルーシ政府に誰が何を吹き込んでも彼らの役に立たない。この戦争についての他の病的な考え方と同じだ」と警戒した様子を見せています。
参戦を見送ってきたベラルーシの姿勢に、もしかしたら変化があるかもしれないという兆しは、次のようなところに現れています。
ロシア軍とベラルーシ軍の緊密ぶりです。
ロシア国防省は、ベラルーシ国内で両軍が演習を重ねていると発表しています。
さらにロシア軍の部隊を新たにベラルーシに展開させているほか、ショイグ国防相も今月ベラルーシを訪問して国防相などと会談していて、ベラルーシ側に参戦を迫っているという見方が出ています。
またベラルーシでは、欧米とのパイプ役とも言われていたマケイ外相が先月急死したことから、ロシアとベラルーシの関係に変化を及ぼすという指摘も出ているのです。
ただ現時点では、ベラルーシ政府がウクライナの“戦争”に参加する可能性は低いという見方が今も有力です。
アメリカ国防総省のライダー報道官は「我々はベラルーシ国内の状況を引き続き注視している。しかし現時点ではベラルーシ側に国境を越える差し迫った活動は見られない」と述べたのです。
ベラルーシ国内ではウクライナの“戦争”に反対する国民が多いとみられており、ルカシェンコ大統領にとっては“戦争”参加がみずからの政権を揺るがしかねないだけに、慎重な姿勢をとっているとみられています。
ロシア軍は、来年の早い時期にも再び首都キーウなどに大規模な攻撃を仕掛ける可能性がウクライナ側から指摘され始めています。
ベラルーシから協力を引き出せば、その可能性は高まると言え、各国は注視しています。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
(この動画は2分41秒あります)
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