【解説】海外で民主化運動などするイラン活動家を工作員が誘拐?(油井'sVIEW)

NHK
2022年12月1日 午後10:14 公開

イラン政府が国内だけでなく国外でも弾圧に乗り出しているという懸念が欧米で高まっています。

というのもイランでは1979年のイスラム革命後、体制に批判的な人たちが大勢、欧米や中東の国などに移り住んだという過去があります。

そのため外国を拠点に反政府活動や民主化運動を行う人が今も少なくなく、今回のスカーフのかぶり方をめぐる抗議デモも欧米などに広がりました。

そうした国外にいるイラン出身者を狙ってイラン政府が情報機関の工作員を送り込んで誘拐などを企てていると欧米の情報機関などが訴えているのです。

イギリスの情報機関MI5は、11月に記者会見で「イラン政府が政権の敵と見なすイギリス国内の人たちを狙って誘拐・殺害などを企てている脅威がある。ことし1月以降だけで少なくとも10件の脅威があった」と明らかにしたのです。

現にアメリカでは、去年、上の写真のイラン出身のアメリカ人女性ジャーナリストがイランの情報機関によって拉致される計画が明るみに出て、大きなニュースになりました。

以来、アメリカ政府は警戒を強化しています。

一方のイラン政府も国外を拠点とするイランの活動家に神経を尖らせているのは間違いありません。

例えば、イランの最高指導者、ハメネイ師のめいでありながら政権に批判的な人権活動家として有名な女性が、ヨーロッパに住む兄弟に託して、今回、ビデオメッセージで「自由な人々よ、私たちを支援して殺人的なイランの政権を支持しないでください」と呼びかけました。

このハメネイ氏のめいは今回、イラン国内で逮捕されたとされています。

国内外で反体制派が結束すれば、体制が揺るぎかねないという危機感がイラン政府にあるのかもしれませんが、国民の人権よりも権力維持を優先する姿勢がさらなる反発を招いているようです。


油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)

前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。


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