「住民投票」と「部分的動員」という強硬手段に出たプーチン大統領ですが、これは失敗が続き、追い込まれ危険な賭けに出たという見方が有力です。
プーチン大統領の失敗とはロシア軍のハルキウ州からの撤退と9月15日までにドネツク州完全制圧というプーチン大統領が設定した目標の破綻、また兵力不足の深刻化があげられます。
今後、懸念されるのはプーチン大統領の次の対応です。
アメリカのニューヨーク・タイムズの記事では「追い詰められたプーチンはかつてなく危険だ」と題し、アメリカとロシア双方が相手の裏をかこうとして瀬戸際戦術を始め、60年代のキューバ危機以来の核危機に直面する可能性を指摘しています。
その一方で実は、ロシア・ウクライナの両政府が合意に至るという前向きなニュースもあります。
ロシアとウクライナの両政府がトルコやサウジアラビアの仲介で大規模な捕虜交換に合意し、実現したのです。
ロシアが解放したのは215人で、ウクライナ軍の傭兵だとして親ロシア派がことし6月に死刑判決を発表したイギリス人の男性2人とモロッコ人の男性も含まれているということです。
さらにロシアからネオナチと呼ばれたウクライナの「アゾフ大隊」の指揮官たちも解放されました。
ウクライナ側はロシアに対して、プーチン大統領と親交が深いロシア寄りの野党の幹部メドベチュク氏やロシア兵など55人を引き渡したとしています。
とはいえウクライナでは、ロシア側がロシアへの併合に向けた住民投票と称する活動を23日から始めると言われています。
プーチン大統領による強硬手段に懸念は強まる一方ですが、今回の大規模な捕虜交換は、緊張緩和に向けた外交努力の潜在的な可能性を示したとも言えそうです。
油井秀樹(「国際報道2022」キャスター)
前ワシントン支局長。北京・イスラマバードなどに14年駐在しイラク戦争では米軍の従軍記者として戦地を取材した経験も。各国の思惑や背景にも精通。
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