今回、スポットを当てるのは『ケシュ#203』
<プロフィール>
ケシュ#203(ケシュルームニーマルサン)仲井陽と仲井希代子によるアートユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出得意とする。『100分de名著』のアニメを番組立ち上げより担当。仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。
ケシュ#203さんに“「放浪記」林芙美子”のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。
原作の『放浪記』を読んだとき、時系列もシチュエーションもバラバラで、まるで林芙美子が原稿用紙の上を走り回り、放浪し続けているような印象を受けました。なので、このイメージをそのままアニメーションの軸にしようと思いました。
アニメの枠は、『放浪記』初版の表紙のデザインが幾何学模様で構成されていて、これも記号が放浪しているような印象を受けたので、それをオマージュして作りました。
芙美子のキャラクターについては、今回は従来の林芙美子像と違って、よりアクティブにしようと思っていたので、走るときに砂煙を足したり、仕草や表情を豊かにしたりと、全体的に生命力と躍動感が伝わるようコミカルな演出を心掛けました。
色彩設計は同時代の作家、金子みすゞを担当した時には敢えて使用しなかった黒を多用し、同じ大正時代でも、こちらはコントラストとメリハリのある色合いにしました。
また、男性陣の服は茶系統の色を1色使いし、女性の着物はカラフルにして差をつけました。それは、林芙美子の眼差しを想像したとき、彼女たちを画一的な存在ではなく、それぞれが背景を持つ人物たちとして描きたかったからです。
『放浪記』の世界をまた新たな眼差しで楽しんでいただけたら幸いです。
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