【第86回】「存在と時間」ハイデガー

NHK
2022年4月18日 午後5:35 公開

今回、スポットを当てるのは『ケシュ#203』

<プロフィール>

ケシュ#203(ケシュルームニーマルサン)

仲井陽と仲井希代子によるアートユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出得意とする。『100分de名著』のアニメを番組立ち上げより担当。仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。

ケシュ#203さんに“「存在と時間」ハイデガー”のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

今回は今まで手がけた解説アニメーションの中でもかなり難解で、画コンテを考える作業に通常よりも多くの時間がかかりました。

特に最初の方は、ものの『在り様』ではなく『在ること』そのものをテーマにしているので、先走って解釈してしまったり、理解したあとも、分かりやすくまとめようとするとハイデガーの主張と異なるニュアンスが含まれてしまうので、どう表現すれば正確に、かつ開かれて伝わるのか悩みました。

アニメーションの枠になっているハイデガーTVという表現は今回の構想の軸で、これは構成台本のなかのテレビの例えから着想を得ました。

テレビを観ている私たちをメタ的に感じられるようにテレビ枠をそのまま使用し、『これは私たちの話である』と思ってもらいたいという狙いがあります。

デザインは「存在と時間」が書かれた当時のドイツの時代感やイメージを現代的に解釈して造形や色彩設計を行いました。難解だからと敬遠せずにより身近に感じてもらうため、ハイデガー氏をユーモラスに描いたり、登場人物たちにコミカルな動きをしてもらっています。

今回のような解説がメインのアニメーションは、いかに物事を記号化できるかどうかにかかっていますが、その際、注意しないとステレオタイプなイメージばかり使ってしまいます。安易な表現でジェンダーバイアス等を強化しないよう、意識して制作しました。

責任を持って主体的に生きること、我々の現在と響き合うように感じて頂けたら幸いです。

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