【第95回】「中井久夫スペシャル」

NHK
2022年12月23日 午後6:45 公開

今回、スポットを当てるのは『ケシュ#203』

<プロフィール>

ケシュ#203(ケシュルームニーマルサン)

仲井陽と仲井希代子によるアートユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出得意とする。『100分de名著』のアニメを番組立ち上げより担当。仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。。

ケシュ#203さんに「中井久夫スペシャル」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

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今回、制作する上で念頭に置いていたのは、『こころの病は、なにをもって病とするのか』ということでした。番組で言及されていた『文化が病を決める』という考えは、普段我々がなんとなく認識している『病/病でない』というラインが、実は四角四面に定まったものではないということを教えてくれます。その認識のズレを、まずアニメーションの斜めの枠で表現しようと思いました。

そして同じく幾何学的なフォルムを使って、規則正しく並ぶ畑が、農業袋や立ち並ぶビル、学校の机に変化していく様子を描き、整然と並ぶ人々と貯蔵用の甕がシームレスに繋がるように見せることで、それぞれの間に関連性があること、我々の社会がいかに規則的で均一化を強いているかを視覚化しようと試みました。

また、テレビは日常の景色ですので、ふいに暴力的なセリフなどが飛び込まないように注意を払いました。例えば幻聴が聞こえてくるシーンで、初めは強い否定の言葉を考えていたのですが、今回の内容を鑑みて、心が弱っているときに飛び込んできても大丈夫なように、具体的なセリフを使わず、大きくデフォルメしたテイストで、「つつぬけ」のような機能を表す抽象的な言い回しに変えました。

自分たちの表現が、差別や偏見に繋がらないように描く責任の重さを日々感じています。

誰かを傷つけるかもしれないことを意識し、その恐れを抱えながら、学び続けていきたいと思います。

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